概要
授業で、私語をしたり居眠りをしたりしている学生がいると、ついつい感情的に怒ってしまい、逆効果になることが多々あります。ここでは、私語をしている学生への対処について、対人関係におけるセルフ・マネージメントとして考えてみます。また、私語への対処についてその他の考え方に基づいた事例も紹介します。
事例
授業での学生の私語や居眠りの原因を、その学生の性格や適性など個人属性に帰属しても問題は解決しません。島宗(2000)は、これを「個人攻撃の罠」と呼び、戒めています。大前提としては、教員自身の講義の内容自体が原因となって、学生にそのような行動を取らせていると考えなければなりません。
なお、学生の居眠り対策および興味深い講義にするための工夫については以下のQ&Aを参照してください。
- 「どうしたら学生がもっと学習に意欲を持つように教えられるのでしょうか」
- 「どのように授業を設計したら、学生が積極的に参加するようになるのでしょうか」
- 「講義中心の授業の他にどのような授業スタイルがありますか」
- 「どのような授業スタイルが、どのような授業内容にあっているのでしょうか」
- 「授業に効果的なビジュアルを使用したいのですが、どのような方法がありますか」
- 「どのようにしたら効果的な授業ができるのでしょうか」
- 「どのようにしたら学生が居眠りをせずに授業に参加してくれるのでしょうか」
学生とのコミュニケーションに役立つ工夫やツールについては以下のQ&Aを参照してください。
- 「学習コミュニティ作りに役立つコミュニケーションにはどのようなものがありますか」
- 「eラーニングに役立つコミュニケーションにはどのようなものがありますか」
- 「学習意欲を高めるコミュニケーションにはどのようなものがありますか」
- 「学習者が望むゴールに向かうのをサポートするコミュニケーションにはどのようなものがありますか」
- 「学習者の相互支援に役立つコミュニケーションにはどのようなものがありますか」
- 「主体的に学ぶ学生を育てるコミュニケーションにはどのようなものがありますか」
学生は大教室で多くの友人と一緒に講義を受ける、という場合に、私語や居眠りという行動を取ることが多いのは事実でしょう。つまり、社会心理学で言う「冷淡な傍観者」状態に陥っている訳です(たとえば、ダーリー(1977)など)。そこで、そのような状態に陥らせないために、さまざまな工夫を取ることができます。
学生の顔と名前を覚えること
多人数の講義形式の授業では、一人一人の学生の顔と名前を覚えるのは、教師にとって至難の業ですが、努力を惜しんではいけません。その手前のことですが、出席を取る際に点呼して、学生と目と目を合わせるとか、学生の席を指定するとか、工夫の余地はあります。
最初に約束すること
私語や居眠りに限定されませんが、授業の最初に、教育評価の方法について説明する時に、このような行為にはペナルティを課すということを宣言し、学生と約束することも大事なことです。「私語は許さない」と厳格に宣言しましょう。
学生に私語や居眠りの暇を与えない
1フレーズ終わる毎に学生に質問をしてみるとか、問題を与えてみるとか、学生が授業に能動的に参加することができるようにすることも必要です。
私語の本質を逆手に取る
金沢(2003)は、私語をしている学生「の近くに行って、授業で用いているマイクを向ける(p.176)」と私語が消えるという事例を紹介しています。これは、私語に限らず、言語の本質(公然化の機能)に基づいた対処法と言えます。
(高橋 秀明)
参照文献
- ダーリー,J. 竹村研一・杉崎和子(訳)1977 冷淡な傍観者―思いやりの社会心理学 ブレーン出版
- 金沢創 2003 他人の心を知るということ 角川書店
- 島宗理 2000 パフォーマンス・マネジメント―問題解決のための行動分析学 米田出版