概要
学習者の学習意欲を高めるには、学習者自身が望むゴールを設定することが大切です。実際には、学習者自身がゴールを設定することはなかなか難しいようです。学習者に受講目的を尋ねると、たまたま時間が空いていた、とりあえず単位を取っておこうと思った、よくわからない、特にない、考えたことがないなどの返事が返ってくることがあります。学習者自身が目標に向かう土台を作るには、SFのスキル「プラットフォーム」が役立ちます。
方法
プラットフォームは現状の課題から望む行き先に向かう出発点を意味します。例えば「私はコミュニケーションが苦手」というのは現状の課題になります。これに対して「生徒と楽しく話がしたい。そのために自分のコミュニケーション能力を向上したい。」というのは解決に向かう糸口になります。学習者自身がどうなりたいか、どうしたいかを問いかけます。
事例
事例として、ワークショップ「今の私」と「未来の私」を紹介します。
「今の私」は、「1.授業を選んだ理由」と「2.受講後どうなっていたいか」についてのディスカッションです。まず個々の学習者は2つの質問にたいして回答を記入します。次に3~4人のグループになります。そして1人1分で発表します。それに対して残りのメンバーが1~2分間OKメッセージを伝えます。これを持ち回りで実施します。
「未来の私」は、「10年後の自分」についてのディスカッションです。まず個々の学習者は「あなたは今30歳です。あの教育工学の授業で、あなたはワクワク・キラキラしながら自ら学習活動していました。あの体験があったので、あなた30歳の今、こんなことをしています・・・。あなたはどんなことをしていますか?」の質問に想像したことを記入します。後の手順は「今の私」と同様です。
2つのワークショップの後、個々の学習者は「あなたはこの授業で何を達成しようとしているのですか?」の項目に自らのゴールを記入します。
効果
回答の一例を示します。
「今の私」
1. もし教師になったとき、生徒にとっても自分にとってもプラスになるような授業ができるようになりたいので。
2. 私は特に教師になりたいというわけではないため、なぜ教職をとっているのか、わからずに教職の科目をとってしまっていることが多い。そのため、この授業の受講後には教職をとる意味や理由をみつけられているようにしたい。
「未来の私」
教育工学で学んだことを生かして、教師とは限らないけれど自分にあった職業を見つけて充実した生活を送っている。また、素敵なパートナーとめぐり合い、お互いを高めあえるよい関係を築いている。
「達成したいこと」
教師として、どのような授業をすれば生徒のためになるだろうか、また、生徒に楽しんでもらえるだろうかということを考えられるようになりたい。
(川淵 明美)
参照文献
- 青木安輝「解決志向の実践マネジメント」河出書房新社
- マーク・マカーゴウ、ポール・ジャクソン「ソリューション・フォーカス」ダイヤモンド社