概要
授業や研究以外のことで相談してくる学生も多々います。このような学生への対応の仕方についてこそ、セルフ・マネージメントの考え方に従い、慎重に行うべきです。また、学校心理学や学校カウンセリングの知見も参考になります。
理論
授業や研究以外のことで相談してくる学生に対処する際には、まずは、教員自身のコストや能力をセルフ・モニタリングしてみましょう。学生から、授業や研究以外のことで相談された場合には、教員自身がその対処をできるのかどうか判断することが必要です。その上で、自分が対処できる限界を学生に明示すると同時に、対処できる他の教員やスタッフ、場合によっては学外の専門家をも紹介するべきです。さらに、必要に応じて当該の学生の保護者への連絡や相談ということもありえます。多くの大学では、「教育相談室」や「心理カウンセリング室」を設置して、このような問題に組織として取り組んでいます。
このことは、教員の教育や研究活動が、大学の中に閉じていないことを示しています。そこで、たとえば、学校心理学(たとえば、石隈(1999)など)や学校カウンセリング(たとえば、小林ら(2008))の考え方や実践について、知っておくことは役立ちます。
さらに、大学の法的な位置づけについて、教育基本法や学校教育法などの教育関連の法律ばかりでなく、日本国憲法に通じておくなど、教員としての基本的な知識を再確認しておくことも大事なことです。
いずれにしても、教員自身と当該の学生以外のさまざまな関係者とのやり取りが必要になることを想定して、当該の学生への対処を進めることが肝要です。
限界
授業や研究自体のこととそれ以外のこととを厳密に区分けることは、本来できないのかもしれません。教育者と研究者とは本来機能が異なります。教員の本来の職務である授業や研究以外のことで、心身共に消耗してしまわないようにしましょう。
(高橋 秀明)
参照文献
- 石隈利紀 1999 学校心理学―教師・スクールカウンセラー・保護者のチームによる心理教育的援助サービス 誠信書房
- 小林正幸・橋本創一・松尾直博(編)2008 教師のための学校カウンセリング 有斐閣