概要
授業にアクティブラーニングを取り入れることによって、学生は居眠りをせずに授業に参加するのみならず、学生の深層学習を促します。ここでは、アクティブラーニングのテクニックをいくつか紹介します。
アクティブラーニング
講義をしてただ情報を伝達するのでは、学生は学習に対して受け身的にしか挑んでおらず、アクティブに学んでいるとは言えません。一番手っとりばやい方法としては、講義の途中に演習をはさんだり、学生に質問を投げかけたりすることによって、学生が自ら考える機会を設けることが大切です。また、文献購読を課したら、それについての感想を書かせたり、ディスカッションボードで意見交換をさせたりするのもよいでしょう。また、グループで討論をさせたり、学習グループを作ってグループで課題に取り組ませたりするのも効果的です。
学生自ら質問をさせて、他の学生にそれに答えさせたり、授業で説明した概念や理論を、学生に実体験や実例にあてはめて考えさせたりするのもよいです。
教員の役割
学生のアクティブラーニングを促進するにあたって、教員は情報を提供したり、情報収集の手助けをしたりするのではなく、学生が新しい知識を構築するための手助けをし、学生自らが問題解決ができるように指導することが大切です。授業の準備にあたっては、「何をカバーするか」を考えるのではなく、学習目的を達成するために「学生に何をさせるか」を考えましょう。学生が学習活動に従事している間は、学生が自律的に問題解決にあたるよう注意を払いましょう。
演習問題を課するにあたっては、全ての学生に一律の問題を課するよりも、個々の学生の能力に合わせて、その学生にとって難解ではあるが不可能ではないレベルの問題を課することが大切です。それには、学生自らそのトピックにあった演習問題を考えさせることもよいでしょう。そうすれば、誰もが目標に到達することが可能ですし、モチベーションも高まります。もちろん、この方法は、学生がただ単位を取るために授業に出席しているのでは、うまくいきません。学生が自ら学びたいという意識がなければいけません。
また、学生が自分の能力を過大評価して、自分の能力以上の課題に取り組もうとしてもだめですし、学生が楽をしようとして自分の能力よりもずっと低いレベルの課題を選んでしまってもうまくいきません。ここでの教師の役割は、学生が自分の能力に合った課題を選んでいるかどうかを見極めることです。
学生の役割
アクティブラーニングを実践するにおいて、多くの場合、事前に準備をすることが難しいことがあります。何故かというと、学生の興味や能力レベルをある程度把握しないと適切な課題を与えることができないからです。したがって、学生を授業進行のプラニングに参加させることも一つの手です。教員がすべて授業の進行を計画するのではなく、学生にもその一端を担わせるのです。そうすることによって、学生の関心を引くことができますし、学生のモチベーションも上がります。
たとえば、いつ休憩をとるのかを学生に聞いたり、学びたい事例を選択させたり、どのトピックをもっと深く掘り下げたいのか、など、学生に直接訊いてみるのもよいでしょう。また、どのような形で評価されたいのか、何を評価されたいのか、なども学生と話し合って決めるのも効果的です。もちろん、学生間の合意が得られない場合は、最終的には教員が決めなければなりません。
ひとつのテクニックとして、授業の初めに白紙のカードを配って、そこに学生に今日は何を学びたいかを書かせる、というものがあります。これを繰り返していると、学生が授業に来る前に何を学びたいのかをあらかじめ考える、という習慣がつき、授業に対して能動的になります。これを行うには、教員のほうにも事前準備が必要です。授業を1回の講義として考えるのではなく、いくつかのモジュールとして準備するのです。そうすることによって、学生のニーズに柔軟に対応することができます。
(青木 久美子)