概要
質問をすることで、学習者が望むゴールを達成するのを助けるコミュニケーション手法にコーチングがあります。OSKARモデルは、Paul Jackson と Mark Mckergow により開発されたSF(ソリューション・フォーカス)コーチングの枠組みです。
方法
第1のステップはOutcome(得たい結果)です。先に紹介したプラットフォームやFP(フューチャーパーフェクト)がこれに相当します。「あなたは何を達成したいのですか?」「あなたは何を得たいのですか?」といった質問で、本人が得たい結果を明確にします。
第2のステップはScale(スケーリング)です。これはゴールに対して、現在地を明らかにしたり、解決に向けて進んだかどうかを図るものさしです。客観的なものではなく、本人にとって主観的な感覚を大切にします。できていないことではなく、できていることを確認します。「10が達成している状態、1がスタート地点としたら、今いくつまできていますか?」「そこまでで既にできていることは何ですか?」
第3のステップはKnow how(ノウハウ)です。スケールを1ポイントあげるための工夫を聞きます。「何があればスケールが1ポイントあがりますか?」
第4のステップはAffirm(肯定)とAction(実行)です。肯定的メッセージと実行をうながします。「いいですね。それでいってみましょう。」
第5のステップはReview(振り返り)です。うまくいったことを活かしていきます。「何がうまくいきましたか?」
事例
OSKARモデルを活用したアンケートの事例を紹介します。毎回授業の開始時に2項目 「1.この授業でのあなたの目標は何ですか?」「2.前回の授業から今日までの間で、1の目標に向かって一歩進んだことは何ですか?0.5歩でも、0.1歩でも、どんな小さなことでもいいので記入してください。」、終了時に3項目「1.あなたの目標達成にすごく役立ったを10とすると、今日の授業はいくつですか?」「2.今日の授業で、あなたに役立ったことは何ですか?」「3.次回の授業で、何があれば1ポイントあがりますか?」のアンケートを実施しました。
効果
実践した結果、以下の効果が観察されました。
- 学習者は毎時間自分なりの目標を設定していた。
- 日常生活の中で、体験と学習を結び付けようとしていた。
- できていることに焦点をあてながら自ら改善点を見つけ、主体的な学習活動を行っていた。
回答の一例を示します。
「開始時」
- やる気を促すような効果的な授業をつくれるようになる。また、ツールを使いこなせるようになる。
- 授業中の先生のスライドや板書などが気になるようになった。先生はこんなところを工夫しているのではないかともおもうことがある。
「終了時」
- 10
- 実際に模擬授業をやって、少人数だったため、よりよくするためにアイデアをもらえてよかった。
- ここで学んだことをこの場限りにせず、実習、現場で生かしていけたらと思う。
(川淵 明美)
参照文献
- 青木安輝「解決志向の実践マネジメント」 河出書房新社
- マーク・マカーゴウ、ポール・ジャクソン「ソリューション・フォーカス」ダイヤモンド社