Q. どのようにしたら効果的な授業ができるのでしょうか

概要

欧米のFDでよく引用されているChickering and Gamson(1987)の「学部教育でのグッドプラクティスの7つの原則 (Seven Principles for Good Practice in Undergraduate Education)」を紹介し、効果的な授業とは何かについて考えてみます。

学部教育でのグッドプラクティスの7つの原則 (Chikering and Garrison, 1987)

1.教員と学生とのやりとりの機会を多く持つ。

まず、教員と学生とのやりとりの機会を多く持つにはどうしたらよいでしょうか。教員が一方的に講義をするのみでは、学生とのやりとりの機会を多く持つことはできません。講義をするにあたっても、講義の内容を細かく分割し、合間合間に学生に質問を投げかけることが大切です。学生に質問をするにあたっても、学生の意見を聞くにあたっても、学生にはどんなに馬鹿げているように思える質問や意見でも重要であること、質問や意見に正しい・間違っている、ということはないことを授業の初めにちゃんと伝えることが大切です。

2.学習における学生間の協働を促進する。

授業の中で、学生のグループによる課題を課したり、グループで討論をさせてグループで意見をまとめる、というような活動を授業に取り込むことによって学生間の協働を促進することができます。また、授業時間外においてもディスカッションボードやソーシャルネットワーキング等を活用した学習コミュニティを形成することによっても、学生間の協働を促進することができます。

3.学生の能動的な学習を促進する。

講義をただ受け身的に聴かせるのではなく、学生に情報収集をさせて、自分の言葉で発表させる、といった学生が主体的に自分の学習に取り組めるような活動を入れることによって、学生の能動的な学習を促進することができます。

4.学生へのフィードバックは即座にする。

学生からの質問には即座に応え、学生が提出した課題等にはできるだけ早めにフィードバックをしてあげましょう。学生の評価とは別に、フィードバックは学生が学習目標を達成するための支援だと考えて、建設的なフィードバックをしましょう。

5.学生が課題に取り組む時間を十分に与える。

授業時間内でも、授業外の時間においても、学生が課題にしっかりと取り組むことができるよう十分な時間を与えましょう。課題は個人で行う場合とグループで行う場合がありますが、グループで行う場合は特に、グループメンバーでスケジュールの調整をしなければなりませんので、時間を十分にとるようにしましょう。また、1 Google. Docsといったグループが同じ場所に集まらなくてもコラボレーションができるような仕組みを授業で紹介することもよいでしょう。

6.学生に対する期待の高さを十分に伝えましょう。

人間、期待されればその期待に応えようとがんばりますし、期待されなければがんばろうとする意欲は少なくなります。学期の初めに、学生の能力・学習達成に高い期待を抱いていること、学生が自らの能力を十分に発揮し、学習目標に達成するためには、教員は援助を惜しまないことを十分に伝える必要があります。

7.学生の多様な能力や学習スタイルを尊重する。

学生の学力には個人差があり、また学習スタイルも様々です。このような中で、一律の教育方法を強要し、一律のペースで授業を行うのは、あまり効果的な教育であるとは言えません。学生の背景・既存の知識・興味・学習スタイルをできるだけ把握し、個々の学生にあった教育方法を提供していくことが最適です。そのためには授業外の時間にも学生が主体的に学習できるような仕組みを作っていかなければなりません。一番簡単な例では、講義内容をオンライン上で視聴可能にしたり、補足的な資料を提供する、等があります。

(青木 久美子)

参照文献

  1. Chickering, A. W., & Gamson, Z. F. (1987, March). Seven principles for good practice in undergraduate education. AAHE Bulletin, 39(7), 3-7.
最終更新日 : 2010年4月1日