eラーニングの現状を知るためには、まずeラーニングの多様性を知っておくことが重要です。OECDの調査報告書(OECD, 2005)の中では、「eラーニング」について、
E-learning refers to the use of information and communications technology (ICT) to enhance and/or support learning in tertiary education.
と記述されています。
細かい定義は人によってまちまちですが、おおむね「ICT(情報通信技術)を利用して行う学習・教育のすべて」がeラーニングであると言えます。すなわち、電子メールで教員に質問できる、というレベルのeラーニングから、すべてを遠隔で行うフルオンライン型のeラーニングまで、様々な形態が存在します。上述のOECDの調査報告書では、対面と遠隔の度合いによって、eラーニングを以下のように分類しています。
- 対面のみ、または遠隔がほんの少し
- 遠隔による補完
このレベルのeラーニングには、講義資料をWebで提供することや、電子メールを利用することなどが含まれます。日本のeラーニングは、このレベルのものが多いと考えられます。 - 遠隔に依存: 講義の一部として行うが、対面の時間はそれほど減らない
このレベルのeラーニングは、遠隔での作業が必須ですが、対面授業の時間は減りません。オンラインディスカッションやグループワークなどが含まれます。 - 対面と遠隔の組み合わせ: 対面の一部を遠隔に置き換える
このレベルのeラーニングは、対面授業の一部を遠隔に置き換えます。こちらもオンラインディスカッションやグループワークなどが代表的な作業になります。いわゆる、ブレンデッド・ラーニングやハイブリッド・ラーニングは、このレベルに含まれます。 - 遠隔のみ
フルオンラインのコースです。日本では、まだ一部でしか行われていません。
対面か遠隔かだけではなく、同期型か非同期型か、個人学習か集団学習か、講義の一部か講義とは独立しているか、といった様々な観点から分類できます。このことから、「eラーニングをしていますか」のような質問にはあまり意味がないことが分かります。eラーニングに関する話題では、どのようなeラーニングについて述べられているのかを意識することが重要です。
海外におけるeラーニングについては、[海外の高等教育でどの程度eラーニングが使われていますか1 ]、[米国の大学における学生のオンラインでの受講状況はどのようなものでしょうか2 ]、[米国の大学ではオンライン教育についてどのように考えているのでしょうか3 ]をご覧ください。
日本におけるeラーニングについては、[日本の大学のeラーニングの実施状況を教えてください4 ]を、日本と海外の比較は[日本の大学のeラーニングにはどのような特徴がありますか5 ]をご覧ください。
eラーニングを知る上では、[ITバブル期に特に米国の多くの大学がeラーニングを提供し、失敗に終わっています。その原因は何ですか。また、どうして、今eラーニングが盛んなのですか6 ]と[社会人学生が多い海外の大学ではeラーニングが有効だと思われますが、状況の異なる日本の場合には適合しないのではないですか7 ]も参考になります。
参考文献
- OECD, “E-learning in Tertiary Education: Where Do We Stand?”, OECD Publishing, 2005.
- Q&A
- 1. 海外の高等教育でどの程度eラーニングが使われていますか
- 2. 米国の大学における学生のオンラインでの受講状況はどのようなものでしょうか
- 3. 米国の大学ではオンライン教育についてどのように考えているのでしょうか
- 4. 日本の大学のeラーニングの実施状況を教えてください
- 5. 日本の大学のeラーニングにはどのような特徴がありますか
- 6. ITバブル期に特に米国の多くの大学がeラーニングを提供し、失敗に終わっています。その原因は何ですか。また、どうして、今eラーニングが盛んなのですか
- 7. 社会人学生が多い海外の大学ではeラーニングが有効だと思われますが、状況の異なる日本の場合には適合しないのではないですか