Q. 海外の高等教育でどの程度eラーニングが使われていますか

eラーニングの定義は様々です。また、eラーニングという表現ではなく、米国ではオンライン学習、英国ではバーチャルラーニングやフレキシブルラーニング(従来の学習形態の延長として見なされた表現)といった名称でも呼ばれています。

米国では少なくとも一つのオンラインコース(この場合、コースの80%以上の教材がオンライン上で配信されているものを指します)を受講している学生数が2009年の秋季で約560万人であるという調査結果が出ています1
これは学生の3.3人に一人が少なくとも一つのオンラインコースを受講していることになります。また、大学の63%がオンライン学習は長期的な大学戦略上決定的に重要なものであると判断し、また、公立大学のリーダの75%以上(私立の非営利大学の55.4%、私立の営利大学の67.0%)がオンライン学習の方が対面学習と比べて同等かそれ以上の質であると述べています1

2009年のEducauseの調査によると、米国の大学のおよそ94%が学習コース管理システム(Course Management System)を利用し、教員の40%が利用している2ことから、米国の大学ではオンライン学習や学習管理システムを使った学習が広く行われています。
一方、英国では2010 年の段階で、高等教育機関の100%がVLE(Virtual Learning Environment)(米国の学習管理システムと同じ意味)を使用しています3。また、99%の大学がが、教授学習戦略(Teaching and Learning Strategy)が技術支援学習(Technology Enhanced Learning)の発展に影響を及ぼすと回答しています。(2010年)3
学習者側の調査結果としては、2008年6月に発表された英国情報システム合同委員会(JISC)による17歳から19歳の大学生を対象にした調査報告書4によると、79%の回答者が週に1度は授業に関連するオンライン教材を活用し、その97%が自分たちの学習に役立っていると答えています。このように、研究主体の大学が多い英国でも、eラーニングが戦略的に大学に導入されてきています。

韓国では、2004年現在、国公立大学の90%、私立大学の76%、教育大学の20%でeラーニングが導入されています5。韓国は国家政策として様々な産業分野でeラーニングを進めており、高等教育においても、eラーニングを促進する包括的計画(eキャンパスビジョン2007)が作られ、この計画の中で、大学のeラーニングを支援するセンターも国内の10地域に設立されています。
韓国は初等中等教育から大学教育、成人教育にいたるまでeラーニングを通じた生涯学習の実現を目指しています。特に、初等中等教育にも力が入れられ、無料オンライン学習サービスであるサイバー家庭学習が、16の都市、道教育庁別にサービスが運営されています。2011年現在、312万人の学生が68,000人のサイバー講師、保護者チュータと共に利用しています6

オーストラリアにおいては、2010年の調査報告書7によると、オーストラリアの職業訓練(VET)制度で登録された研修機関の50%以上でeラーニングが利用され、40%の雇用者が研修にeラーニングを用いており、教員や研修講師のほとんどが、なんらかの電子メディアを教授や研修活動に使っています。eラーニングが主要な流れになっていると報告されています。

(篠原 正典)

参考

  1. The Sloan Consortium 「Online Education in the United States,2010」
    http://sloanconsortium.org/sites/default/files/class_differences.pdf (2011年2月確認)
  2. EDUCAUSE Core Data Service Fiscal Year 2009 Summary Report
    http://net.educause.edu/ir/library/pdf/PUB8007.pdf (2011年2月確認)
  3. UCISA(2010 Survey of Technology Enhanced Learning for higher education in the UK)
    http://www.ucisa.ac.uk/groups/ssg/~/media/groups/ssg/surveys/TEL%20survey%202010_FINAL.ashx (2011年2月確認)
  4. JISC Great expectations of ICT: How Higher Education institutions are measuring up
    http://www.jisc.ac.uk/media/documents/publications/jiscgreatexpectationsfinalreportjune08.pdf (2011年2月確認)
  5. 海外の高等教育におけるeラーニングの質保証の展開 メディア教育研究 Vol. 3, No. 2 PP.45-59
    http://www.code.ouj.ac.jp/wp-content/uploads/No.6-06tokusyuu05.pdf (2011年2月確認)
  6. 韓国のeラーニング
    http://www.koreabrand.go.kr/jp/know/know_view.do?CATE_CD=0011&SEQ=1526&pageIndex=1 (2011年2月確認)
  7. Australian Flexible Learning Framework “2010 E-learning Benchmarking Survey – Final Report
    http://www.flag.edu.au/system/files/2010+E-learning+Benchmarking+Survey+-+Final+Report.pdf (2011年2月確認)
このページのTag :
最終更新日 : 2012年4月28日