Q. 発達障害学生にはどのような配慮が必要ですか

概要

「なぜか、コミュニケーションが取りにくい。」「意図している事がうまく伝わらない。」「こだわりが強く急に怒りだし、興奮する。」学生に対してこうした困惑を体験した教職員は多いと思いますが、この中には発達障害のある学生もいます。発達障害は何らかの要因で脳の中枢神経系に障害が生じ、生まれつき認知やコミュニケーション、社会性、学習、注意力等の能力に偏りや問題を生じ、現実生活に困難をきたす障害のことです。
意志疎通の難しさ、様々なトラブル、忘れ物など、周囲から疎んじられる事が多く、孤立しがちで学業不振や不登校になる場合もありますが、並はずれた粘り強さや、集中力や才能を持つ者もいます。2004年に発達障害者支援法が制定され、今後は大学入学以前に診断やサポートがなされるようになると思いますが、現在は、まだ本人や家族さえその事実を知らない者も少なくなく、大学の教職員の理解はほとんど進んではいません。
米国や豪州、欧州などの大学では、発達障害・学習障害に対するサポートが、障害学生全体のサポートの6割以上を占めています。

障害を理解する

発達障害をどうとらえるか、専門家の意見も多様です。生まれつきで病理は終生持続し、薬物療法など医学的な治療法は現時点ではないといわれますが、発達障害学生は義務教育の段階で、いじめなどで心理的なトラウマを抱えている者も少なくありません。周囲の配慮や理解、そして本人が自分の個性や陥りやすい困難を理解し、対応を工夫することによって、学びやすい、生きやすい環境を作っていくことは可能です。世界には得意な分野を磨いて、個性的な才能を開花させ、様々な形で社会に貢献している人も少なくありません。

大学で問題となる発達障害

1)アスペルガー症候群と自閉症(ASD)
2)注意欠陥多動性障害(ADHD)
3)学習障害(LD)

この三つの障害は重複している事も多く、生まれつきの障害でありながら、学校や家庭において対人関係で困難をきたしやすく、いじめ等で傷つき、うつや不登校など二次的な困難を抱えている場合もあります。ちょっとした指摘でも、自分が非難されているように感じるケースもあります。まず当事者の問題と病理をよく理解することが一番大切です。その人にあった対応、説明の仕方などを工夫することでコミュニケーションがしやすくなります。

コミュニケーションで注意すること

  • 学内に特定の場所を決め、事前に日時を設定して面接しましょう。
  • 話だけでなく、文書や図などを使うことが効果的です。双方が事後確認できるようにメール等は記録として保存しておきましょう。
  • 直接面接する際も、話した言葉を文字や図などに置き換えながら説明をします。
  • いわゆる日本的な「いわずもがな」の意思の疎通は大変苦手です。論理立てて、明快に説明するようにしましょう。抽象的な言葉や、推察などを避け、学業の評価等も点数化するととてもよく理解する場合が多いようです。
  • 本人に学習上の長所や弱点など、今後の課題と合わせて文字化して説明することも役に立ちます。
  • 具体的な質問や問い合わせがあった際には、具体的にできるだけ早く回答しましょう。
  • 今後の支援の仕方を考える上でも、保護者とも意志の疎通を確保しましょう。

(広瀬 洋子)

支援情報

参照文献

  • (独)国立特別支援教育総合研究所でまとめられた「発達障害のある学生支援ハンドブック」(株)ジアース教育新社、2006
    http://www.kyoikushinsha.co.jp/ book/0041/
  • 「発達障害がある学生支援ケースブック―支援の実際とポイント―」(株)ジアース教育新社、2007
    日本LD学会の研究委員会による「大学で学ぶ発達障害学生の理解の支援のためのガイド」
最終更新日 : 2010年4月1日