Q. 留学生の生活指導において注意すべき点はどのようなことでしょうか(1.文化適応)-2

概要

留学生の生活指導まで手が回らないことも多いと思います。しかし学業への取り組みを支えるのは生活基盤です。その意味でまず、留学生の日本文化への適応についてそれなりの配慮をすることが大切です。

(3)文化適応の遷移パターン

海外にいる日本人学生についての研究結果1によると、彼らは、(a) 不適応期、(b) 境界期、(c) 適応期、(d) 文化差克服期、といった遷移を示すといわれています。不適応期には、新しい経験や環境に対して積極的になっているために、ともすると挫折や不安、欲求不満、憂鬱などを感じ、カルチャーショックの結果として、疲れや不眠症、食欲不振、心身症などを引きおこします。境界期には、新しい環境への適応に改めて努力をしようとしますが、言葉がうまく使えないことによって欲求不満は頂点に達します。身体的症状は減少しますが、悲しみや喪失感、ホームシックなどがでてきます。適応期には、言語的能力が蓄積され、コミュニケーションがそこそこできるようになり、健康を回復します。新しい環境での出来事が予測可能になり、自信を獲得します。文化差克服期では、バイカルチュラリズムと社会的な柔軟性を獲得し、異文化に柔軟に適応できるようになります。

(4)適応障害に対する対応

教員だけの対応には限界があります。教員は時間も不足していますし、心理面接などの技術を知っているわけでもありません。そこで、東京都であれば、東京都国際交流委員会が行っているようなライフサポート窓口などを利用するように留学生に指導を行うのがいいでしょう。他にもインターネットで検索すれば、こうした相談窓口は各地に見つけることができます。まだ十分な数の場所があるわけではありませんが、いわゆる異文化間カウンセリングを受けることで、留学生の適応障害に対応してもらうことができ、彼らの異文化適応が支えられるようになるでしょう。なお、これらの窓口は、一般の在日外国人のためのものですので、必ずしも学校カウンセリングの立場で行われてはいませんが、それでも役にたつと思います。

もしくは、一般の神経クリニック(神経科)や心療内科のカウンセリングを受けることも良いでしょう。こうした場所には、臨床心理士の資格をもった人々がいるので、適切な心理面接を受けることができます。ただ、臨床心理士のすべてが異文化間カウンセリングに長けているわけではないことには留意しておく必要があります。

(黒須 正明)

参照文献

  1. ファーカス、河野「アメリカの日本人生徒たち」東京書籍 1987
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最終更新日 : 2010年4月1日