Q. 留学生の生活指導において注意すべき点はどのようなことでしょうか(1.文化適応)-1

概要

留学生の生活指導まで手が回らないことも多いと思います。しかし学業への取り組みを支えるのは生活基盤です。その意味でまず、留学生の日本文化への適応についてそれなりの配慮をすることが大切です。

日本文化への適応

留学生は、異文化である日本に暮らすことになったわけです。したがって、日本文化の様々な側面で、自文化との違いを感じ、しばしば当惑することになります。

(1)コミュニケーションスタイル

日本には「言わぬが花」「沈黙は金」「出る杭は打たれる」ということわざがあるように、これまではあまり公の席で自分の意見を言わない傾向がありました。最近の若い人たちには少し変化が見られますが、それでも質問をしたときに手を挙げる学生の数は少ないのが普通です。小学校のように、みんなが「ハイ、ハイ」と手を挙げる光景は、大学ではなかなか見られません。
そうした中で、留学生が自文化のやり方で挙手をしてしまうと、時に「出る杭は打たれる」ということわざのように、「あいつは目立ちたがりだ」という評価が生まれてしまうことがあります。
こうした雰囲気を作らない一つの方法として、挙手ではなく、教員が名簿を使ってランダムにあててゆく、というやり方があります。

(2)外国人蔑視

若い人の間には少なくなっているように思いますが、中高齢の人たちには、こうした態度を示す人がまだ多少います。日本人のメンタリティの底には拝欧米主義が残っていることがあるので、特に、韓国や中国などアジアからの留学生に対して、こうした態度が示されることがあります。当然ながら、そうした人たちにあったとき、留学生は不愉快な気持ちになったり、ショックを受けたり、内向的な学生の場合には自罰的な気持ちになってしまうこともありえます。
こうした経験は学内より、学外の一般社会で経験することが多いでしょう。しかし、そのことが原因となって、留学生のモチベーションを低下させることになっては困ります。そこで、学内に留学生相談の窓口がある場合には、そうした場を積極的に活用させるよう、折に触れて留学生に伝えておくことも必要です。そのような専門の窓口がない場合には、教員が時折、彼らと話をしてそうしたネガティブな経験について話をして、気持ちをほぐすような場を持つことが望ましいといえます。いわゆるノミニュケーションの場を設けることもいいでしょう。
そのような場面では、人間としての共通性や普遍性と、文化による変異という点についての理解を深めるようにしましょう。教員が一方的に説教をするのではなく、彼らに問題を提示し、それに対する意見を出させ、自分から理解を深めてゆけるようにすることが望ましいやり方といえます。

(黒須 正明)

最終更新日 : 2010年4月1日