概要
外国人というと英語が通じると思ってしまいがちな日本人の傾向は、第二次世界大戦後のアメリカの影響力の強さを反映したものといえます。しかし、留学生がみな英語を流暢に使えるとは限りません。
日本語と英語
留学生の指導にどの言語を使うかについての日本の大学の方針には、いくつかのパターンがあります。ほとんどの大学は、留学生に対する指導を日本語で行いますが、その中にも日本語学習プログラムを独自に持っている場合があります。つまり大学として日本語の学習を支援しようとするもので、たとえば早稲田大学には、早稲田大学日本語教育研究センターがあり、別科日本語専修課程や日本語チューター教室、学部・大学院教育など、多様なプログラムを用意しています。その対極のアプローチとして、数は少ないのですが、大学院教育をすべて英語にしてしまい、日本人・外国人の区別なく、英語だけで授業も行うし、論文指導も行うというものがあります。
このように、日本語を重視する大学がほとんどですが、英語を重視するところもある、といったところが現状といえます。
しかし、ここで注意しなければならないのは、英語は世界で共通語とされていても、留学生すべてが英語に堪能なわけではない、という点です。いいかえれば、日本語も英語も不得手な留学生がいる、ということです。このような場合、日本語を強化するという考え方と英語を強化するという考え方がありますが、他の日本人学生との関係を重視した場合には、やはり日本語の強化を目指した方がいいと思われます。
もちろん、英語は世界の共通語になっており、国際会議での発表や海外のジャーナルへの論文提出などは英語でやる場合がほとんどですから、日本語を重視するとは言っても、英語について疎かにするわけにはいきません。その意味では、留学生は大変な重荷を背負っているといえます。
さらに大学によっては、独自に日本語の学習プログラムを設置していないところもまだ多く存在しており、そうした場合、片言の日本語しかできず、かつ英語の実力も十分でない留学生の指導は、各教員の努力に委ねられているのが実情です。
(黒須 正明)