Q. 留学生の指導は何語を基本にすれば良いのでしょうか-1

概要

外国人というと英語が通じると思ってしまいがちな日本人の傾向は、第二次世界大戦後のアメリカの影響力の強さを反映したものといえます。しかし、留学生がみな英語を流暢に使えるとは限りません。

留学生の日本語能力

留学生に対しては、留学してくるならその国の言語をマスターしてからくるべきである、という考え方があります。これは、ある意味からすれば尤もなもので、日本に留学してから日本語の学習をしていたのではその時間がもったいないといえますし、拙い日本語で教師を悩ませるのは失礼である、という考え方もあるでしょう。
日本人が外国、主に欧米先進国ですが、そこに留学しようとする場合、まず国内でその国の言葉を勉強していくことが多い傾向がありました。留学先として、第二次世界大戦までは英米独仏が多かったため、英語やドイツ語、フランス語が学ばれましたが、戦後はフルブライト奨学金制度ができたりしたためアメリカが多くなり、結果的に英語の比重が増しました。最近では、現地で言葉を学ぼうという語学留学が盛んになっていますが、現地で言語学習をするという意味では、日本国内で学習するより効果的で効率的かもしれません。

いずれにせよ、欧米に行って理工学や文学、社会科学などを勉強しようとする場合でも、音楽や絵画や料理を勉強しようとする場合でも、言葉が通じなければ相手にされないし、課題を出されてもそれに対応することができません。その意味で、留学先の言葉をきちんと学習してから外国に出かけるという態度は望ましいものといえるでしょう。そもそも日本に勉強にくるなら、日本語ができて当然である、という考え方はその裏返しといえるでしょう。

しかし、この点は留学生が学ぼうとする研究領域や、留学生を受け入れる国の立場によって異なってくる、という点を忘れてはいけないでしょう。たとえば、文学や芸術などの日本の文化、あるいは日本の社会について学びたいという場合、いいかえれば「日本の何か」を学ぼうという場合には、当然ながら留学生には日本語の能力が要求されますし、そうあるべきだろうと考えます。けれども、言語に依存する部分が少ない学問領域、たとえば理工学などを勉強したいという場合には、日本語が十分にできなければ日本に留学すべきではない、とは必ずしもいえないわけです。また日本の文教政策として2008年に「留学生30万人計画」が提示され、日本の科学的イニシアチブを高めるためにも、海外、特にアジア諸国から留学生を招きたいという考え方があります。
こうした場合、時にはほとんど日本語ができないまま、日本に来てしまう留学生がでてくることになります。

(黒須 正明)

参照文献

  1. http://www.studyjapan.go.jp/jp/
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最終更新日 : 2010年4月1日