概要
バーバルコミュニケーションの基礎となる言語の多様性について知っておくことは、留学生と言語によるコミュニケーションを取る際に重要なポイントのひとつです。
世界の言語
外務省のサイト1によると、スイスでは、ドイツ語、フランス語、イタリア語、それに限られた地域ではありますがレートロマンシュ語も使われています。それぞれの利用人口は、64%、20%、6%、そして1%です。また、インドでは、公用語(official language)はヒンディー語ですが、他に憲法で公認されている州の言語が21あります。さらに方言を含めると1683の言語があり、850の言語が日常生活で利用されているということです2。世界には数千種類の言語があると言われています。いいかえれば日本のように基本的に日本語だけを使っているような国もありますが、複数の言語を母語(mother tongue)として利用している人々の住む国が多いということです。
図1 World Language Map3次の世界地図は世界の言語地図で、主要な言語によって世界地図を色分けしたものです。
ここでは中国語、英語、スペイン語など、利用人口の多い言語が色で示されており、利用人口の小さい言語の部分はすべて灰色になっています。日本語や韓国もそうですし、欧州や東南アジアもそうなっています。いいかえれば、それほどまでに世界の言語は多様だ、ということです。
共通語としての英語
世界で使われている言語は多様ですが、多くの国で利用されている共通語(common language)は現在では英語です。実際にどの国で英語が通じるかに関する公式な統計はみあたりませんが、基本的に欧米やオセアニアでは、アメリカやイギリスやオーストラリア、ニュージーランドなど、英語を公用語としている国だけでなく、フランスやイタリアなどの一部の国を除き英語が通じることが多いですし、そうでなくても英語が使える人を比較的容易に見つけることができます。アジアでも、シンガポールやフィリピンでは英語は公用語になっていますし、インドでも英語を話す人が多くいます。
そのように英語が通じる国は多くありますが、通じない国が多いことにも留意しておく必要があります。また英語が通じるといっても、たとえばシンガポールの英語がシングリッシュと言われるように、それぞれの母語の影響を受けて、各国における英語には特徴があり、少なくとも日本人にとって聞きやすいとは言えないことも多いのです。
留学生と言語
留学生は、基本的には留学先の言語を流暢に使えることが望ましいのですが、必ずしもそうではないのが実態です。日本に来る留学生の場合、母国で日本語の学習をしてくることもありますが、ほとんどせずに来日することもあります。こうした問題については、項を改めて説明することにします。
(黒須 正明)
参照文献