概要
教育においては様々な教材を活用しますが、その多くは著作物です。そのため、教育に携わる者は、著作権についての知識を持つことが必要です。
著作物とは?
著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法第2条第1項第1号)と定義されています。「創作的に」といっても、高度な創作性が要求されるわけではなく、作成者の個性が現れていればよいと考えられます。また、芸術的な価値や学術的な価値が必要というものではありません。したがって、作成者の考えや気持ちがその人なりに表現されているものであれば、幼稚園児の絵や小学生の作文であっても著作物になり得ます。
なお、データや事実は、例え学術的な価値が極めて高いものであったとしても、それ自体は思想や感情を創作的に表現したものとはいえないため、著作物ではないことになります。また、著作物は「表現したもの」であることが必要なため、学説や思想といった考え方そのものも著作物ではないことになります。しかし、データや学説自体は著作物ではありませんが、データを図表にまとめたものや、学説を解説した文章は、その表現に作成者の個性が現れていれば、著作物になり得ます。
著作物には様々なものがあります。著作権法第10条第1項には、以下のような著作物が例示されています。
- 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
- 音楽の著作物
- 舞踊又は無言劇の著作物(振り付けのことです。)
- 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物(漫画も含まれます。)
- 建築の著作物
- 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
- 映画の著作物
- 写真の著作物
- プログラムの著作物
なお、これはあくまで例示であり、前述の著作物の定義に該当するものであれば、この例示に該当しなくても著作物になります。
また、編集物やデータベースも、何を収録するか(素材の選択)、どのように配置・体系化するか(配列・体系的構成)に創作性があれば、著作物として保護されます。
著作物を授業で利用するには原則として著作権者の許諾が必要
著作権法上、教材として著作物をコピーして配布することは「複製」及び「譲渡」に、音楽を聴かせることは「演奏」に、映像をスクリーンに映し出すことは「上映」に、サーバに蓄積し多数の学習者が自宅から視聴できるようにすることは「複製」「送信可能化」及び「公衆送信」にあたり、いずれも、原則として、著作権者の許諾が必要となります。
著作物以外に使用許諾を必要とするものは?
著作権法では、著作物だけでなく、実演、レコード(音を固定したもの)、放送及び有線放送も保護されています。そのため、これらのものを使用する場合も、原則として権利者の許諾を得る必要があります。
また、一つのコンテンツについて、多数の権利者がいることがあります。例えば、音楽CDであれば、作詞家や作曲家などの音楽の著作者、歌手、演奏家などの実演家、音を固定(収録)したレコード製作者がいます。音楽CDを利用する場合、原則として、これらの権利者全ての許諾を得る必要があります。
なお、「肖像権」など、著作権法に規定された以外の権利もありますので、注意が必要です。
(尾﨑 史郎)
参照文献
- 著作権法第2条第1項第1号