概要
著作権法では、学校その他の教育機関において、一定の条件を満たしている場合には、著作権者の許諾を得ることなしに著作物等を利用することができるという権利制限を定めています。どのような「条件」を満たしていればよいか正しく理解し、授業等での活用に問題が生じないように配慮することが大切です。
対面授業で一定条件を満たせば、許諾なしで著作物の利用が可能
しかし、授業の教材として利用する場合については、
- 営利を目的としない教育機関であること
- 授業担当教員又はその授業を受ける者が複製すること
- 本人の授業で使用すること
- 授業で必要とする限度内であること
- 既に公表された著作物であること
- 著作物の種類及び用途並びに複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害さないこと
- 慣行があるときは出所の明示をすること
の全ての条件を満たす場合は、著作権者の許諾を得ることなしに複製できることとされています(著作権法第35条第1項。また、同法第47条の9により複製物の生徒への譲渡(配布)もできます。)。
また、著作物の上演、演奏、上映、口述についても、
- 既に公表された著作物であること
- 営利を目的としないこと
- 聴衆・観衆から鑑賞のための料金等を取らないこと
- 演奏したり、演じたりする者に報酬が支払われないこと
- 慣行があるときは出所の明示をすること
の全ての条件を満たす場合は、著作権者の許諾を得ることなしに行うことができます(同法第38条第1項)。
そのため、対面授業の場合は、上記の規定の範囲内で著作物を利用している限り、著作権者の許諾を得る必要はありません。
eラーニングでの著作物の利用には、原則として許諾が必要
一方、サーバに蓄積して多数の学習者の自宅に送信するようなeラーニングの場合、著作権法上は「複製」だけでなく、「送信可能化」及び「公衆送信」にも該当することになります。このような「送信可能化」や「公衆送信」については、授業のためであれば著作権者の許諾を得なくても行ってよいという規定はありません。
そのため、対面授業では、著作権者の許諾を得ることなしに利用できる著作物であっても、eラーニングで利用する場合には、原則として、著作権者の許諾を得る必要があることになります。たとえ、認証で受講学生以外アクセスできない場合でも同様です。
(尾﨑 史郎)
参照文献
- 著作権法第35条第1項
- 著作権法第38条第1項