Q. 国は、高等教育の障害学生支援について、大学に対して大きく変革を求めていくという事ですが、その支援の対象、範囲などを端的に教えてください

概要

文部科学省が、今後、各大学の障害者支援体制に関して様々な改革を求めてくるでしょう。
それらを端的にわかりやすく示しました。

大学における障害者支援の対象は?

「学生」の範囲

大学等に入学を希望する者及び在籍する学生です。科目等履修生・聴講生等、研究生、留学生及び交流校からの交流に基づいて学ぶ学生等も含みます。今回、教職員は対象にはなりませんでした。米国など多くの国々では、教職員も対象としております。日本はまだまだですが、まずは一歩前進ということです。しかし今後、教職員に範囲を広げて行こうという議論は必ず出てくると思います。

「障害のある学生」の範囲

障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にある学生を指します。米国などでは、学生本人の自己申告が基本です。教師が「君は支援が必要だから、支援を受けなさい。」とはプライバシーにかかわるので、言えないのです。
パターナリスティックな日本の教育現場で、どのような形で人権が守られ、かつ、支援が必要な学生に支援をすることができるのか、試行錯誤しながら進んでいくことになると思います。

どのような活動に支援をするのか、その範囲は?

学生の活動の範囲

授業、課外授業、学校行事への参加等、教育に関する全ての事項を対象としております。
教育とは直接に関与しない学生の活動や生活面への配慮は、検討会の検討対象とはなりませんでした。「今後、日本の高等教育機関では、障害者支援はどのように位置づけられ、大学は何を求められていくのか、その法的根拠と方向性を教えてください」を参照してください。学生に対する合理的配慮とは、大学等が個々の学生の状態・特性等に応じて提供するもので、一概にはいえません。多様かつ個別性が高いものです。以下に合理的配慮の要点を6つ示しました。

大学はどのような点に配慮する必要があるのでしょうか?

  1. 機会の確保:障害を理由に修学を断念することがないよう、修学機会を確保することが重要で、かつ、教育の質を維持することが重要です。
  2. 情報公開:障害のある大学進学希望者や学内の障害のある学生に対し、大学等全体としての受入れ姿勢・方針を示すことが重要です。
  3. 決定過程:権利の主体が学生本人にあることを踏まえ、学生本人の要望に基づいた調整を行うことが重要です。
  4. 教育方法等:情報保障、コミュニケーション上の配慮、公平な試験、成績評価などにおける配慮の考え方を整理する必要があります。
  5. 支援体制:大学等全体として専門性のある支援体制の確保に努めることが重要です。
  6. 施設・設備:安全かつ円滑に学生生活を送れるよう、バリアフリー化に配慮することが重要です。

大学が具体的に取り組むべき課題は何でしょうか?

<短期的課題>

各大学等における情報公開及び相談窓口の設置

  • 大学に質問しても、いろんな部署をたらい回しにされる事がないように、各大学等は、受入れ姿勢・方針を明確に示し、HP等で広く情報を公開することが必要です。
  • また、相談窓口の統一や支援担当部署の設置が必要です。

拠点校及び大学間ネットワークの形成

  • 大学は規模も様々、また地域性も多様です。すでにノウハウを蓄積している大学もあれば、これから恐る恐る始めようという大学もあるはずです。優れた取り組みを実施し、近隣地域の大学の支援体制向上に積極的に寄与する大学等を地域における拠点校として整備することが重要です。

大学として障害者支援を行うメリットとは?

  • 若年層の人口は減少しています。大学にとって今後、米国の大学のように生涯教育も重要な役割になると思います。高齢者、留学生なども増加していくでしょう。その時に、障害者支援のシステムがうまく機能している大学は多様な学生の受け入れのノウハウに通じる基礎ができているということです。たとえば、メディアの環境整備、柔軟な教授法、多様な教材の提示方法、事務連絡方法、などは障害者のみならず一般の学生にとっても大きな恩恵となります。

大学評価に障害者支援の項目がさらに明確化され、障害者支援のありようが大学ランキングなど、多くの目にふれる機会が多くなると思います。

これからの課題・・・・まだまだ課題は山積み、でもまずは一歩

今後関係機関が取り組むべき課題は、
①入試の改善、②高校及び特別支援学校と大学等との接続の円滑化、③通学上の困難の改善、④教材の確保、⑤通信教育の活用、⑥就職支援等、⑦専門的人材の養成、⑧調査研究、情報提供、研修等の充実、⑨財政支援等、山積みです。一歩一歩確実に進めていくことが求められています。

(広瀬 洋子)

資料

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最終更新日 : 2013年3月26日