Q. ICT活用によって学生の学習意欲を高めるにはどのような方法がありますか

学習意欲は学習に対して自らやりがいや意義を感じる内発的な動機と言えます。必修科目で単位を取らなければ落第してしまうものであれば、外発的な要因が動機付けになります。しかし、これはやらなくてはならないという義務的な要因ではあっても、やりたいという意欲が学生にあるとは限りません。学習意欲を高めることは非常に重要ですが、最も難しいことでもあります。「eラーニングの動機付けはどのようにすればよいですか」で説明したように、学習の動機付けに学習者のAttention 、Relevance、Confidence、Satisfactionが重要だというARCSモデルがあります。これらの要素を、ICTを活用することによって高め、継続させることができれば学習意欲を向上させられる可能性があります。

まず、ICT活用に限らず、対象となる学習を修了することによって、どのような能力が身につくのか、何ができるようになるのかといった学習目標を明確に定め、その学習目標が学習者に対して適切であることが必要最小限の項目と言えます。上級レベルの人が初級レベルの学習を行っても学習意欲は小さくなります。その逆でも学生のレベルに比較して目標が高すぎると意欲が下がります。学習者に合わせた適正な目標設定が重要です。それから、どれくらい学習すれば修了するのかなどの条件も明確にする必要があります。最終目標到達まで時間を要する場合には、ちょうど登山のように3合目、4合目と、目標のマイルストーンを設定して、達成目標を細分化して、達成感を感じられるようにすることも重要です。このような前提条件が整えられた状況で、ARCSモデルへのICT活用効果を考えてみましょう。

Webの情報を利用して、学習科目に関連する様々な最新の情報を検索して学生の興味を惹きつけることができます(Attention)。そして、学生の興味と関連性を示すこと(Relevance)が更なる興味を引き付けます。例えば「相対性理論」、「電磁誘導」、「データの圧縮」、「データの暗号化」などといった難しいそうな科目でも、それぞれ、学生が使っている携帯電話のGPS機能、非接触IC学生証、Webからの曲のダウンロードとMP3プレーヤでの再生、Web上でのショッピングといった日常生活に非常に関連していることを、提示することができます。もちろん対面授業でもこれらの一部は可能ですが、既にWebに掲載されている情報やデータがそのまま教材として利用できるものがありますので、教員にとって準備が容易ですので、ICTを使うとより利用が簡単です。曲のダウンロードやWeb上でのショッピングは、実際にデモをしながらわかりやすく説明することができます。教員にとっては少し大変かもしれませんが、毎回の授業内容に関連したトピックをWeb上から事前に調べておくと、学生に興味を与えられると共に、毎年同じ授業を繰り返しているのではないという印象を学生に与える効果があります。

学習管理システムを使うと、どこまで自分の学習が進んで、どのような成績で、後何を学習すべきかがわかり、学生の自信(Confidence)に繋がります。学習管理システムを使わなくても、授業時間外でのサポートとして、電子メール等による学生からのレポートや質問に回答することにより、学生のConfidenceの向上につながります。このとき、ICTの特長である迅速な回答を行うと、より効果が期待できます。授業では先に進むだけでなく、必ず後戻りも必要です。毎回の授業は相互に関連しているはずです。実施した授業内容や使った教材をインターネットからアクセスできるようにし、授業中あるいは授業時間外に参照できるようにしておくと一貫した授業の効果的な構成ができます。

そして、アンケートツール1などを使って、学習の理解度を測定し、フィードバックすると学生の満足度を上げる効果があります。アンケートシステム1は、教育機関又は研究機関等に所属する個人が非営利な教育・研究目的で使用する場合には無料で利用することができます。このツールを使うと、自動集計機能やグラフ表示機能があるので、学生からの回答結果をリアルタイムで表示することもできます。対面授業のように手作業で集計する必要はなく、教員にとっては最初の利用に関してはどうしても面倒だという感覚があるかもしれませんが、このようなツールは非常に利用しやすくできているため、一度使ってみると、その便利さを感じられます。

(篠原 正典)

参考

  1. リアルタイム評価支援システム (2011年2月確認)
    http://reas2.code.ouj.ac.jp/cgi-bin/WebObjects/top
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最終更新日 : 2011年4月1日