Q. なぜFD(Faculty Development)が必要なのでしょうか

概要

ファカルティ・ディベロップメント(FD)活動は世界のどの国の大学でも行われるようになり、またその必要性は高等教育の大衆化とともに、重要視されています。FD活動の起源はイギリスやアメリカの高等教育のマス化に遡ることができますが、現代の高等教育の高度化、国際化の中で大学の競争力強化のために特に重要視されています。

起源

アメリカの高等教育は1970年代の大衆化に伴い、大学をめぐる環境が大きく変化したことを背景として発展しました。1950年代末からのアメリカの高等教育はいまや古典となったジェンクスとリースマン(Jencks & Riesman,1968)が指摘した「アカデミック・レボリューション」、すなわち大学教員の急速な学術研究志向の高まりと並行して進みました。
一方における学生の大衆化、他方における教員の研究志向、という二つの矛盾する趨勢の間で、学生の不満が昂ずる一方で、大学教員の心理的なストレスも高まりました。こうした状況に対処するために、ファカルティ・ディベロップメント(FD)が各大学において注目されるようになったのです。

組織

こうしたFDが比較的早くあらわれた例としては、1962年にミシガン大学「学習・教育研究センター」 CRLT(Center for Research on Learning and Teaching)を中心とする活動があげられます。
さらに1980年にはFDの全国組織として「高等教育の専門職的・組織的開発ネットワーク」(Professional and Organizational Development Network in Higher Education ―PODN)が結成され、またその後1991年に、「全米教授・学習フォーラム」(National Teaching & Learning Forum ―NTLF)が結成されました。FDはこのように全国的な組織化の動きによって、各大学に大きく広がっていました。

内容・焦点

1980年代のアメリカの大学教員のFD活動の実態を調査したBrakemanによれば、教員の資質を高めるものとして、(1)学会関連研究会、(2)サバティカル、(3)カレッジからの夏期手当て制度、(4)大学連合の会議やワークショップ、(5)財団などからの研究助成金、(6)専門的なコンサルティングなどといったFD活動が行われていました。

こうした活動の焦点は、基本的には教員の個人的な能力を発展させることにあったといってよいでしょう。たとえば、良質な教育に求められる教員の資質として、「学問分野の最先端の知識、教材を使いこなす能力、学生とのコミュニケーション力、情報伝達能力、粘り強く思考し、その情熱を学生に伝達する力、人間の能力に楽観的であること、よく学生の面倒を見ること、人間として感受性に富み、誠実で温かい人格など」が求められると、Bain(2004)の研究で明らかになりました(Bain,2004)。その達成のためのFD活動が、様々な形態(「効果的なICT活用のFD活動はどのようなものですか」参照)で展開されています。

(苑 復傑)

参照文献

  • Jencks & Riesmam(1968) The Academic Revolution, New york: Doubleday & Company.
  • Bain(2004)What the Best College Teachers Do, Harvard University Press.
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最終更新日 : 2012年4月28日