概要
Faculty Development(FD)及びStaff Development(SD)の概念定義、FD・SDがターゲットにしている四つの領域、大学設置基準の改正によるFDの義務化について、簡単に紹介します。
FD・SDの概念
アメリカの大学では大学教員の能力向上や資質開発がファカルティ・ディベロップメント(Faculty Development)として定義されていますが、イギリスやヨーロッパではスタッフ・ディベロップメント(Staff Development)という言葉が使用されています。FDもSDも、知識を素材として成り立つ学問の府としての大学制度の理念・目標・役割を実現するために必要な「教授団の資質開発」または「大学教員の資質開発」を意味します(有本、2005)。その資質開発の対象は教授集団と教員個人の両方を含んでいます。
FD・SDの領域
教授団または、教員の資質開発はどのような領域で行われるかについては、新堀(1993)の整理に従えば、主に四つあります。(1)専門職開発(Professional Development)、(2)授業開発(Instructional Development)、(3)カリキュラム開発(Curriculum Development)、(4)組織開発(Organizational Development)となっています。
(1)の専門職開発(PD)は教員の研究能力の開発に焦点をあて、学会参加への援助や学術休暇なども含んだもので、FDの中でも最も早い時期から行われてきたものです。(2)の授業開発(ID)は、教員の授業運営、授業手法の能力の開発を重点としています。(3)のカリキュラム開発(CD)は教育課程の内容・シラバスの充実にあります。そしてこれらを推進するための組織的な基盤を整備するために(4)の組織開発(OD)があります。
日本の大学でのFDの義務化
日本におけるFDは、大学審議会答申(1998)の定義によると「個々の教員レベルだけではなく、全学的に、あるいは学部、学科全体で、非常勤講師の参加も得て、それぞれの大学等の理念・目標や教育内容・方法についての組織的な研究・研修(ファカルティ・ディベロップメント)を推進することが必要である」とされています。また大学設置基準の改正(2008)によって、FDが制度化され、「大学は、授業の内容及び方法の改善を図るための組織的な研修および研究を実施するものとする」(第25条の2)と規定されています。
いま、高等教育機関において「教授団(あるいは個々の教員)の教育に関する能力や技術などの資質を組織的な研究・研修によって開発すること」が政策的に推進されています。またFD研修及び研究の実施は、教員個人への義務付けではなく、大学という組織への義務付けとなっております。大学現場では、教員の教育力、学士の学士力、大学の教育力の向上が叫ばれ、その中で教員の教育力の向上は最も重要なポイントとなっています。
(苑 復傑)
参照文献
- 有本章『大学教授職とFD』東信堂 2005
- 新堀通也「ファカルティ・ディベロップメント」『大学評価-理論的考察と事例』玉川大学出版部 1993