概要
メディア利用FDの活動内容について、アメリカの主要大学の事例をまとめました。
- ICT活用のFD活動とはFDとメディア利用とを有機的に組み合せることであり、ICTを教育改善、FDの機軸にすることです。授業方法にメディアが不可欠となっているだけでなく、授業管理のベースとしてWebCT、Blackboard、CourseWorks、Smartboardなど(Learning Management System)が用いられていることが特徴です。メディアを利用することによってFDのフォーマットが形成されています。
- 大学内にFDのための専門組織が設置されています。それは全学レベルのものだけではなく、部局レベルのセンターが各学部に組み込まれている場合もあります。これらの組織には種々のテクノロジー・スペシャリストが配置され、教員、教育技術専門家、技術者、大学院生のサポーターも加わっています。これが教員の多様なニーズに対応する基盤となっています。
- FDは、システム・ソフトウエア開発、コース開発、教材作成、情報提供、データ収集と分析、利用者へのサポートなど多様な形態をとっています。これらを計画的に組み合わせることによって、FDを恒常的・継続的に行っています。
- ニーズに対応する対象者別研修が構造化されています。専門職を目指す大学院生(TA)のための研修、新任教員のための研修、学院長などの幹部教員のための研修、一般教員の能力向上のための研修と特定専門分野別の教員のための研修などがあります。内容は対象者ニーズに応じて、専門横断的な教育方法の研修、特定専門分野の教育方法の研修、メディア技術の導入利用促進のための研修、カリキュラムの改善と授業改善のための研修と教材作り、コース作りのための研修など、多様な内容と形態をとりながら、構造化されています。
- 研修支援の手法としてオンライン情報の提供によるFDのサポートが浸透し、ファカルティ・ハンドブックのような教員のためのガイドブックが、オンラインで公開されていることが一般的です。LMSの利用方法については各種マニュアルのオンラインによる公開、またその研修内容のビデオファイルによるストリーミング配信が行われており、大学のヘルプデスクがこれらのコンテンツの使い方などをフォローする場合が多いです。
- 多様な教育・研究の要求と変化に対応して、教員の時間の管理、情報の管理をICT技術の活用によって、効果的に行うことを支援することが重要であり、社会科学系教員向けの統計学ラボの研究支援活動も盛んです。またFDはプログラムのマネジメントだけではなく、研究プロジェクトをつくり、研究開発の要素を研修活動に組み入れて行われています。さらにFDの効果の評価が活動に組み込まれるとともに、優秀者表彰などのインセンティブが工夫されています。
(苑 復傑)