概要
テキサス大学・オースティン校の事例を通して、ICT活用のFD支援活動の運営方法の特徴を紹介します。メディア利用のためのFD組織が全学レベル、および部局レベルの二つのレベルにおいて体系的に整備されているところに特徴があります。
教員革新センター(Faculty Innovation Center)
工学部(College of Engineering)の教員革新センター(FIC)は工学部の教員が革新的な教育を行うためにその能力を多面的に開発することを目指しています。センターには12人のスタッフがおり、その専門分野にはインストラクションナル・デザイン、Web 開発、グラフィックデザイン、3D視覚化、ビデオ制作、プログラミング、遠隔学習、プロジェクトマネジメントなどが含まれています。 こうした専門的知識をもとに恒常的なサポートや、月例の教育改善セミナー(Faculty Innovation Seminar)など各種の研修プログラム(表1)を行っています。
1 | 学際的デザインにおける最先端の教授法 |
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2 | 学生が設計した人工衛星プロジェクトの総括 |
3 | PRIME:工学のための専門職責任モジュール |
4 | 化学反応分析・設計のためのインタラクティブなコース教材開発 |
5 | 質量とエネルギーバランスの構築:多レベルのウェブベース教育ツール |
6 | 教授問題解決法 |
7 | 工学教育:学生の視点から(学生公開討論会) |
8 | インスピレーションを与える指導力 |
9 | 実務学習 |
効果的教育センター(Center for Teaching Effectiveness)
全学レベルの組織CTEとFICと協力して毎年行われる新人研修(New Faculty Orientation)プログラム(表2)があります。事前に詳細なハンドブックが配布され、5日間の日程で教員の必要とする研修の内容が、メディア利用と有機的に組み合わされています。
項目 | 内容 |
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1授業の構成 | 授業のデザインと教授法、高い思考技術、シラバスのサンプル |
2教授戦略 | アクティブ・ラーニング、授業のベスト実践、教室のアセスメントのテクニック、学生が深い学習に達するための原則、第1回目の授業の仕方、学生をレクチャーに集中させる方法、オンライン学習のスタイルリソース、授業の準備、学生の学習を支援する戦略、試験の仕方についてのヒント |
3IT技術の活用 | ブラックボードの活用法、コースマネジメントシステムの活用法、テクノロジーのツールと教育への応用、専門メディア実験 |
4教育評価 | 学科による評価、中間評価、コース評価、中間評価の事例、自己点検評価、学生評価、優れた教員の条件 |
5新任教員への期待と ガイドライン |
ポートフォリオの作成、コンサルティングガイドライン、効果的なモデリングの技術、成功する新人教員の資質、テニュア、新任3年目の教員評価 |
6研究資源 | 研究費、研究アサインメントの作成、UTの研究費、UTの研究Webリソース |
7学部の情報を 得るには |
工学部の組織図、事務局、メンター・講師のコンタクト情報、教員革新センターのコンタクト情報 |
(苑 復傑)