概要
授業に留学生がいる場合、留学生に対する配慮はもちろん必要ですが、だからといって日本人学生に不満を感じさせてしまってはいけません。両者に対する配慮が必要となります。
一般的事項
1.全体の進行について
留学生は、日本語による授業についてゆくのに苦労します。しかし、だからといってあまりにゆっくり、丁寧に進行したのでは、全体の進捗に影響がでてきますし、日本人学生に不満を感じさせることにもなりかねません。そこで、以下のような点に配慮するようにしましょう。
2.話し方
早口の教員は、ゆっくり目に話すように努力しましょう。これは日本人学生にとっても理解を容易にする効果があります。また適宜、ブレーク(息継ぎ)を入れましょう。これは文章でいえば、段落の区切りに相当します。ブレークが入ることによって、留学生を含む学生は、次の内容に移行するのだ、ということが理解できます。
また、明瞭な発音をするように努力しましょう。もごもごした発音では、聞き取りにくく、またイントネーションが間違っていては、同音異義語を誤解してしまうことがあります。この点もまた、日本人学生にとっても有益な点といえます。
なお、話をしている間、学生の間に視線を動かしましょう。これは日本人学生にとってはアイコンタクトを作ることによって、教員が自分たちに語りかけてくれているのだ、という気持ちを持たせる役目を果たしますし、留学生については、彼らの表情をみて、理解できていそうか、困惑しているかどうかを推測することができます。
3.板書の仕方
最近の授業ではPPT(パワーポイント)を利用することが多くなり、板書は補助的に用いられるようになりましたが、それでも以下のような点に留意しましょう。
まず、板書を基本にする場合、黒板やホワイトボードは半分にわけて、まず左半分に、次に右半分に書いてゆきます。右半分を書き終えたら、左半分を消して、そこに新しい内容を書いてゆきます。こうすると、右半分はそのまま残っているので、転記速度の遅い留学生にとってありがたいことになります。黒板やホワイトボードが上下に分割されている場合にも同じことです。
また悪筆の教員はできるだけきちんとした字を書くようにしましょう。悪筆でもいいのです。きちんと書けばいいのです。乱雑な崩し字は日本人学生ですら読みにくいものです。
4.動き回る
教壇の一定の場所に立ったまま話をするのではなく、適宜学生達の机の列のなかに入ってゆきましょう。これによって学生は教師の存在を身近に感じることができるようになりますし、特に留学生については、ノートの中身をそっと見ることによって、ちゃんと付いてきているかどうかを確認することができます。
(黒須 正明)