Q. オンラインコミュニケーションツールを活用するコツを教えてください(1)

概要

オンラインコミュニケーションツールを用いて教育効果を挙げるためには、学習心理学の知見が有効です。学習心理学には、基となる考え方により、大きく、行動主義、認知主義、構成主義の三つがあります。ここでは、行動主義の考え方とその適用例を示します。

行動主義の考え方

行動主義はその名の通り、人間の行動を対象とします。そして、行動主義では「行動が変わることが学習である」と考えます。行動主義の重要な概念に「オペラント条件付け」と呼ばれるものがあります。学習者が自発的に起こしたオペラント行動に対して適切なフィードバックを与えることで、この自発的な行動を強めたり(強化)、弱めたり(弱化)することができます。
例えば、子どもが自発的に宿題をやった時にこれをほめることは、この行動を強化する正のフィードバックです。これを「好子」と呼びます。逆に、悪戯をした子どもを叱ることは、この行動を弱める負のフィードバックです。これを「嫌子」と呼びます。また、行動主義の応用として「プログラム学習」という考え方があります。プログラム学習では、学習を促進するために以下のような方法が効果的であるとしています。

  • スモールステップの原理:できることを少しずつやらせる。
  • 積極反応の原理:正のフィードバックで行動を強化する。
  • 即時確認の原理:結果をすぐにフィードバックする。

議論の活性化

コミュニケーションツールを用いた学習で、質疑や議論が活性化せずに困ることがあります。行動主義の考え方はこのような場合に応用できます。行動主義の基本的な考え方は、「学習者の自発的な行動を強化すること」です。従って、学習者が自発的に質問や意見を述べた場合には、この自発的な行動を強化するために「積極反応の原理」でフィードバックを返します。それも、「即時確認の原理」にあるように、即座にフィードバックを返すことが有効です。
フィードバックの返し方としては、「質問どうもありがとうございます」といったお礼や、「それは重要な意見ですね」といった相手を尊重した評価の与え方が考えられます。
一方、いきなり回答を返したり、反対意見を述べることは、コミュニケーションの活性化にはつながりません。また質問にいつまでも回答を返さないのもコミュニケーションを低下させます。

課題の与え方

「スモールステップの原理」に従えば、いきなり難しい課題を与えることは、コミュニケーションツールを用いた学習では望ましくありません。学習者のレベルに合った課題を与える必要があります。しかし、グループ学習の場合は、学習者のレベルはまちまちであることが想定されます。このような場合には、レベルの高い学習者が独走してしまったり、議論に飽きてしまったりすることが予想されます。
レベルの高い学習者がレベルの低い学習者の手助けをするように、講師が議論の進め方のファシリテーションを行う必要があります。その場合も、レベルの高い学習者の支援行動を引き出すように「積極反応の原理」や「即時確認の原理」を使うことができます。

(仲林 清)

最終更新日 : 2010年4月1日