概要
授業での質疑の方法について知っておくと、予期しない質問にも誠意を持って答えることができます。
事例
授業で予期していない質問をいきなり受けた時、教員は動揺するものです。しかし、これも危機管理の考え方を知っていると対処方法がありえます。質問の受け答えには、いわゆる常套句がありますので、それらをあらかじめ用意しておくことができます。
まず、授業は生ものだということを常に認識しておきましょう。教員が授業計画通りに授業を進めることができる、ということは思い上がりとさえ言えます。学生とのコミュニケーションの過程で、授業の進行は変化していきます。それを授業計画通りに修正しようとすると、無理ができてきます。
そこで、授業中において、学生との質疑の方法をあらかじめ決めておき、対処方法を想定しておくことができると思います。アンホルト(2008)は、口頭発表でのプレゼンテーションと聴衆との質疑の方法について扱っていますが、授業場面でも参考になりますので、以下で、授業場面に則して簡単に紹介します。
学生からの質問は2種類あります、つまり、予期していてすぐに答えられるものと、予期していなくてその場で答え方を決めなければならない質問です。想定内の質問にはすぐに答えることができますが、「それは良い質問です」とか「根本的な点に気づきましてね」と言ってから答えることは、質問した学生も良い気分になるので、お勧めです。
一方で想定外の質問への対処は、質問内容自体への回答に考える時間が必要なばかりでなく、回答の仕方を適切に決めなければならないということで、非常に困難な状況におかれます。考える時間が必要ですので、質問自体を繰り返して時間を稼ぐとか、質問した学生に質問の内容をもっと明瞭にしてもらう、という方法があります。それでも質問内容に答えられない場合には、「すみません、わかりません」と素直に答えるのが最も誠意がありますが、「その質問のような見方をしたことがなかったので、時間をかけて考える必要があると思います」と言って、次回以降の授業で学生と議論することを約束することも悪くないでしょう。
(高橋 秀明)
参照文献
- アンホルト, R. H. R., 鈴木炎・I. S. リー(訳) 2008 理系のための口頭発表術:聴衆を魅了する20の原則 講談社