Q. マスコミとのコミュニケーションは、どのように進めたらよいですか

背景

「科学コミュニケーション」におけるマスコミュニケーションの位置や役割については、「科学ジャーナリズム」と言われることもあります。科学ジャーナリズムには、さまざまな観点、研究がありますが、たとえば、日本科学技術ジャーナリスト会議(2004)を参照してください。

大学や研究機関には、広報を担当する部署があります。広報が、マスコミに対して、大学や研究機関のニュースをプレスリリースします。従来は、広報を担当するのは、普通の事務官が行っていましたが、最近は、研究者やマスコミ出身の広報担当者も増えてきました。

国立大学などの公の機関に所属している教員は、多くの場合、公の資金を得て、研究活動をしています。そこで、研究に一定の区切りを迎えたら、報道を通じて、社会と関わることが求められていますので、マスコミとのコミュニケーションの機会もますます増えてくることになります。

論点

ここでは、大学の教員が、マスコミとコミュニケーションを取る際の注意点を挙げてみます。

三輪・高橋(2010)1の事例研究では、マスコミには、取材された場合に記事を公開する前に事前にチェックすることを求める、という例が挙がりました。科学者としては良く知っていることでも、それをマスコミがどのように表現するかは、事前に確認しておきたい、ということで、多くの科学者が当然のこととして実践していると思います。

しかし、山本(2012)2が述べるように、これは、事前の検閲に当たります。マスコミには、報道の自由や記事を編集する権利がありますので、それを侵害する行為になるということを理解し、そのような行為は慎みましょう。逆に、山本(2012)3が述べていますが、相手が大学教員の場合に、事前確認を求める記事しか書くことができないマスコミ人は、取材のアマチュアとみなすべき、ということもあります。

(高橋 秀明)

参考文献

  1. 三輪眞木子・高橋秀明 2010 研究者からみた科学ミスコミュニケーション事例研究:原因と解決策 科学におけるコミュニケーション2009 総合研究大学院大学 209-231.
  2. 山本佳世子 2012 研究費が増やせるメディア活用術 丸善
最終更新日 : 2013年3月20日