著作権法でいう「公衆」には、特定かつ多数の者を含むものとする(第2条第5項)こととされています。アクセス制限は、利用者を特定するものではありますが、利用者が多数であれば、特定かつ多数ということになり、著作権法上は「公衆」ということになります。特定かつ少数であれば公衆とはなりませんが、50名程度であれば多数、つまり「公衆」と解されます。公衆に送信することは、同一構内を除き、公衆送信ということになります(著作権法第2条第1項第7号の2)。授業のためであればサーバに蓄積して公衆送信してもよいという規定はありませんので、著作権者の許諾が必要ということになります。
次に、学内のイントラネットの場合ですが、同一構内(同一の者の占有区域内に限る)のプログラム以外の送信は、公衆送信から除かれています(著作権法第2条第1項第7号の2カッコ書き)ので、学内のイントラネットが同一構内にとどまっている場合は、公衆送信には該当しないことになります。しかし、他のキャンパスや受講者の自宅からアクセスできる場合は、同一構内ではないため、公衆送信となり、原則として著作権者の許諾が必要ということになります。
同一構内の場合は、公衆送信権の問題は生じないことになります。しかし、サーバに蓄積することは、公衆送信になるか否かとは別に、複製となります。複製については、著作権法第35条第1項で授業のための複製を一定条件の下で認める規定があります。履修者以外もアクセスできる場合は、授業のための複製とはいえませんが、履修者しかアクセスできない場合は、同項の対象になることもあり得ます。例えば、翌週の授業の予習をさせる際に、通常であれば、コピーして学生に配るところをサーバに入れておき、履修者が事前にアクセスして予習するための蓄積(複製)であれば、同条の要件を満たし得ると思われます。ただし、権利者の利益を不当に害する場合は対象外です(第35条第1項の詳細については[授業で使用するためであれば著作物をコピーできると聞いたことがありますが、どこまでできるのですか]を参照してください。)。
なお、授業でコピーして生徒に配った資料をサーバに蓄積する場合は、授業に必要な限度内を超える可能性があります(配布のためのコピーは授業のために必要な複製といい得ても、配布済みの資料をサーバへ蓄積することが授業に必要な複製といい得るかは疑問です。)
(尾崎 史郎)