ITバブル期に、営利eラーニングとして米国の大学から提供された学習の主な対象は、有職成人でした。米国の大学は日本の大学と違い、学生の中の有職者が占める割合が非常に高い(フルタイム学生のおおよそ半数が有職者(2006年)1)なのが特徴です。
有職者は、昼間は仕事があるため大学への通学が難しく、そのため、いつでも、どこでも学習が可能なeラーニングは非常に適した学習方法だと言えます。また、米国では、学歴によって収入に大きな差がある2ことから、eラーニングによる上位の学位取得に対する需要が多いという特徴があります。
このような状況から、1990年代後半から2000年の初めに、米国の大学でブームのように起きたeラーニングは、日本の大学と学習者層や学習目的が異なるため、日本には適合しないのではないかという意見がありました。
ところが、最近では、米国の大学でも、通常の対面授業を補完するために併用されるeラーニングの方がフルオンラインで単位が取得できるeラーニングよりも一般的となっています。「ITバブル期に特に米国の多くの大学がeラーニングを提供し、失敗に終わっています。その原因は何ですか。また、どうして、今eラーニングが盛んなのですか」で記述したように、eラーニングのようなICT技術を活用することによって、従来の対面授業では困難であった学生中心主義、構成主義、プロジェクト型学習、といった理論に基づいた新しい教育法をより活用しやすくなった事も原因と思われます。これは、在学者を対象として、オンラインで様々な学習資源にアクセスできるようにする、そしてオンラインにおいても教員⇔学生及び学生同士のコミュニケーションの機会が増えるなど、学習者のニーズに応じた効果的な学習を実現することを目的として用いられています。
すなわち、この形態は学習者層および導入目的とも、日本の大学にも適合するものと考えられます。このようなeラーニングはブレンド型と呼ばれており、英国や韓国その他のICT活用教育を先進的に進めている国で広く用いられています。
(篠原 正典)
参考
- 米国の教育統計:社会人学生の割合
http://nces.ed.gov/pubs2008/2008031_App1.pdf (2011年2月確認) - The Big Payoff: Educational Attainment and Synthetic Estimates of Work-Life Earnings, U.S. Census Bureau,
http://www.census.gov/prod/2002pubs/p23-210.pdf (2011年2月確認)