Q. どうしたら学生がもっと学習に意欲を持つように教えられるのでしょうか

概要

学習科学理論によると、学生はただ教師から知識を伝達されるのではなく、教えられた知識を自分の自らの経験にあてはめて考え、自分の言葉で説明し、内省することによって初めて深い学びに到達するといわれています。学びに対して学生に意欲を持たせるには、自分で考える機会・他の人と話し合う機会を十分に与える必要があります。学習に対する意欲はもちろん個人差がありますが、授業において学生が意欲を持って取り組むようにするには以下のテクニックが考えられます。

学生のニーズを把握する

学生は、自分がコースを履修するにあたっての動機が満たされると、学習に意欲を持つ傾向にあります。まず、何故学生がこの授業を履修しているのかの動機を知ることが大切です。

学生の積極的な参加を促す

学生は、自ら体験したり、意見を述べたり、創造したり、問題解決をしたりすることによって学びます。学生が受け身的にただ講義を聴く、という授業は、なかなか学生の学習意欲をそそるのが難しいです。講義をするのであれば、ところどころに学生に対しての質問を投げかけること。学生が答えられるようなことは、できるだけ質問として投げかけ、学生自らが考える機会を与えましょう。
大教室の授業で、学生がみんなの前で質問されるのを避けるような状況であれば、小グループを作ってディスカッションをさせるのもよいでしょう。

学生にどうしたら授業に意欲が持てるようになるのかを訊く

学生に、過去の経験から、どのような授業で学習意欲がわき、どのような授業で学習意欲がわかないのかを語ってもらうとよいでしょう。その時、どのような点が学習意欲をそそり、どのような点が学習意欲を失わせる要因となったのかをリストアップしてもらい、それを小グループで対面あるいはディスカッションボードで話し合ってもらうとよいでしょう。
過去の研究では、以下の8つの要因が学習意欲の向上に繋がったと言われています。

  • 教員の熱意
  • 授業内容の関連性
  • 授業の構成
  • 授業内容の難易度の適切さ
  • 学生の積極的な参加
  • 多様性
  • 教員と学生とのコミュニケーション
  • わかりやすく具体的な事例の活用

適切な学習目標を設定する

先行研究によると、教師の学生に対する期待が学生の学習到達度に多大な影響を及ぼしていることが分かっています。教師が、学生に対して、意欲を持って学習に取り組むことを期待していれば、おのずから学生はそのようにふるまう、と言われています。学生の課題の提出等に対して適切な学習目標を設定して、教員の期待を学生に伝えましょう。
課題の難易度や量に関しては、現実的に考えて、学生にとってあまり難しすぎるものではなく、かといってあまり易しすぎるものではないようにしましょう。学生が、一生懸命取り組めば到達できる学習目標を設定し、どうしたらその学習目標に到達できるのかをステップを踏んで説明するとよいでしょう。

学生の自主性を尊重する

課題や評価項目に関して、学生が自主的に選択できるようにするとよいでしょう。また、最初は易しい課題から始め、学生が達成感を得られるようにして、徐々に学期が進むに従って難易度を高くしていくと、学生の満足度が高まります。

(青木 久美子)

参照文献

  • Davis, B. G. (1993). Tools for Teaching. Jossey-Bass Publishers.
  • McMillan, J.H., & Forsyth,D.R. (1991). What theories of motivation say about why learners learn. In R.J. Menges & M.D. Svinicki (eds.) College Teaching: From Theory to Practice. New Directions for Teaching and Learning, no. 45. Jossey-Bass Publishers.
このページのTag : | | | |
最終更新日 : 2010年4月1日