概要
大学では、本の抜粋のコピーであったり、新聞記事であったり、様々な教材を利用します。視覚障害学生が利用できるように、点訳・音訳・電子テキスト化などの準備が必要です。
使用するテキストをいち早く学生に伝達: ICTの活用
- 授業で使用するテキストを、年度初め、あるいは学期の始まる前に、なるべく早くリーディングリストとして学生に伝えましょう。点訳・音訳・電子テキストへの変換が考えられますが、1冊の本の点訳に1ヶ月以上の時間がかかります。電子テキストを入手したい場合は、著者や出版社と交渉し、承諾してもらわなくてはなりません。
- 授業のシラバスをサイトなどで開示しておけば、どの時期にどの教材のどこの部分を使うのかが明確になり、準備のスケジュール調整が容易になります。印刷資料であれば、スキャナとパソコンを使って電子ファイルに変換し、パソコンの読み上げソフトで音声として聞くことができます。ただし、変換ミスもあるので、校正の時間が必要です。例年、同じテキストを使用する場合は、電子データを保存しておくことも重要です。
点訳
学内学外のスタッフやボランティア等に依頼して点訳します。時間がかかりますので、教員は、本人と相談して必要な点訳の優先順位をつけることをお薦めします。
拡大教材
弱視学生は、テキスト等をコピー機やパソコンで文字を拡大して利用します。それなりの時間がかかりますので、事前に渡しましょう。
テキストデータでの配布
教員が作成する資料等は、その元データをテキストファイルの状態で事前に渡すようにします。
OCRの利用
文字で印刷された鮮明な印刷物は、スキャナとパソコンを利用してテキストファイルに変換できます。弱視の場合は、それを拡大して利用します。点字を使う場合は、テキストデータを点訳ソフトで点字に変換します。
図や表:文字による説明にする必要があります。また、事前に図表を学生に渡すことができれば、点字プリンタで簡単な図を作ることも、凹凸図にしておくこともできます。
凹凸図の製作
- 立体コピー機: 点字使用者向けに触ってわかる図を作成する装置です。熱で黒く描かれた部分が盛り上がる特殊な紙を使い、凹凸図を作成します。(20万円程度)
- 表面作図器「レーズライター」: ゴム製の下敷きの上に専用のセロハン紙を乗せ、表面にボールペンで引っかくようにして触れる図を描く道具です。専用セロハンは点字図書館などで市販されています。
朗読サービス等
「代読」(講義中の板書等をその場で口頭で伝えるなど)や「対面朗読」(利用者と支援者が対面しながら資料等を読み上げる)による朗読サービス、テープ録音、パソコンでの画面読み上げソフトや画面拡大ソフトの活用(レジメ等のテキストデータによる提供)など、様々な支援方法を組み合わせ効率よく学習できるような配慮が必要です。
パソコンによる教材提示
授業でパワーポイントなどパソコンのディスプレイを提示する場合は、事前に学生に印刷物あるいは電子データを渡して下さい。
写真や絵など: 教員あるいは隣の学生などに説明してもらうことも必要です
(広瀬 洋子)
参照文献
- さらに詳しい内容を知りたい方へのお薦め参考図書「視覚障害学生サポートガイドブック」監修、鳥山由子、日本医療企画、2005
- 日本点字図書館で、すでに点字化されている本があるかどうか探すことができます。個人向けのサービスとしては、対面リーディング、希望点訳、個人朗読などがあります。
http://www.nittento.or.jp/