概要
視覚障害といってもそれぞれの当事者の抱える困難は様々です。個人の経験、家庭や学校環境によって個人差があり、ニーズも多様です。視覚障害は視力の程度によって盲と弱視に大別されます。
盲
点訳
視覚的な情報をまったく、あるいはほとんど得られない。読み書きには点字を使用し、白杖を使い歩きます。聴覚・触覚を使って物を認識しています。
弱視
文字の拡大や補助機器の助けを得て保有する視力を使い、一般の人と同じ墨字(点字に対して、普通の印刷や字を指す)を使います。
視力以外に、見える範囲が狭い視野狭窄、視野欠損、光をまぶしく感じる羞明(しゅうめい)、夜や暗い所で見にくい夜盲(やもう)、などがあります。
弱視学生の抱える困難
- 遠くのものが見えない: 黒板の文字がみにくい。
- 小さいものが見えない: 細かい字が読めない。
- 動いているものが見えない: ビデオなど映像がみえない。
- 大きいものの全体像が見えない: 遠近感がつかめない。
- よく似たものの区別ができない: 漢字を正確に書き写せない。
中途失明者の場合
事故や病気で、ある程度の年齢になってから、急激に視力が低下したり、失明したりすることがあります。こうした場合、点字や白杖の使い方など、視覚障害者としての基本的な生活を一から学習しなくてはなりません。その状態を受け入れがたく、心理的にも不安定になりがちです。カウンセリングなど専門機関との連携をとりながら、柔軟な対応が必要です。
多様な学生とニーズ
このほか、色覚異常、またいくつかの症状を同時に抱える学生もいます。照明に対しても様々なニーズがあり、サポートは本人の要望をよく聞くことから始ります。
視覚障害学生とのコミュニケーションの方法
まずは積極的に声をかけましょう。ただし相手には誰から声をかけられているのか、わかりません。
「○○さん、おはようございます。英語を担当しています教員の小林です。」というように、自己紹介を最初にしましょう。
視覚情報を補うために、言葉で状況を説明してあげることが重要です。また、話をしていて、自分がそばから離れる時や、誰かが仲間に加わった時、言葉で説明することが大切です。ちょっとした言葉かけが、大きな安心感を与えます。まずは積極的にトライしてみましょう。教職員はもとより、学生にも、機会あるごとに多様な学生とのコミュニケーション方法を教えることも大切です。
「この・・・・」「あそこの・・・・」などの指示代名詞は避けましょう。
歩行のサポート
介助する者は、本人に左右どちらに立って欲しいか聞いてください。そして斜め半歩前に立ち、自分の肘の少し上をつかんでもらいます。介助者の方が背が低い場合は、肩に手をおいてもらいます。
「さあ、歩きましょう」と声をかけることを忘れずに。階段や段差なども言葉で教えてあげて下さい。
点字ブロックの設置、段差の解消、ぶつかりやすい物の除去など、構内を歩きやすい環境にすることも大切です。
食堂等でのサポート
周囲の人がサポートしてあげれば、一緒に楽しく会話をしながら食事をすることができます。
(広瀬 洋子)
参照文献
- 視覚障害、聴覚障害をもつ学生のキャンパスライフや学習方法をドキュメンタリータッチで描いたVHS、DVD教材です。教職員が実際の障害学生の生活の様子を知るのに役立ちます。
『高等教育のバリアフリーを目指して』(33分)
放送大学教育振興会
http://www.ua-book.or.jp/
販売 丸善(株)出版事業部