概要
授業の中で、グループ・ディスカッションをするように指示したのに、学生がディスカッションの場に座っているだけで参加しようとしない、一部の学生の発言しかなかった、学生同士が意見の違いを認め合おうとせず感情的な議論になった、などの経験はありませんか?「コミュニケーションは苦手」と考えている学生は思いのほか多いようです。プラスのエネルギーが漂う学習コミュニティを作るには、SF(ソリューション・フォーカス)のスキル「OKメッセージ」が役立ちます。
方法
「OKメッセージ」とは、相手が肯定されている、尊重されていると感じるような言動や態度を示すことです。
OKメッセージには、非言語メッセージと言語メッセージがあります。非言語メッセージには、表情、視線、声のトーン、姿勢、態度などがあります。やさしい表情や笑顔、やや前傾でのりだすような姿勢、ソフトなアイコンタクト、うなずきなどで、相手に関心があって、よく聞いていますよというメッセージを伝えます。
言語メッセージには、あいづち、ねぎらい、感謝、共感、感嘆、肯定的な解釈などがあります。例えば「~嬉しいです。」「ありがとう。」「~に同感です。」「~は素晴らしいですね。」「~が得意なんですね。」「~が伝わってきました。」などのフレーズを用います。
事例
事例として、ワークショップ「冬休み中のGood News!」を紹介します。
まず2人1組になります。次に学習者Aが「冬休み中のGood News」を1分間で話します。そして学習者BがOKメッセージを1分間で伝えます。授業開始直後に5分ほどで実施できます。他にはこの1週間で嬉しかったこと、得意なこと、ちょっと自慢したいこと、うまくいっていることなど、肯定的なテーマを取り上げます。
効果
実践した結果、以下の効果が観察されました。
- 学習者から生まれるプラスのエネルギーにより、学習へのモチベーションが向上した。
- 短時間で学習者間の信頼関係が生まれ、プラスのエネルギーが漂う学習コミュニティが育まれた。
学習者のコメントの一部を紹介します。
- モチベーションの上がる話の重要性がわかった。冬休みで楽しかったことなど話をしてから始めると、授業がずっと楽しい気持ちのまま受けられた。
- 人見知りをしてしまい、初めて会う人と上手く話すことが苦手だったが、OKメッセージなど言い合うことが話のきっかけになり、初めて会った人とも話すことができたので教師になったらまずはOKメッセージで仲良くなろうと思う。
- OKメッセージで人の良い所を探すということが、生徒をほめて伸ばすということとつながると思うので、生徒とのよりよい関係を築くためにも参考にしていきたいと思った。
(川淵 明美)
参照文献
- 青木安輝「解決志向の実践マネジメント」河出書房新社
- マーク・マカーゴウ、ポール・ジャクソン「ソリューション・フォーカス」ダイヤモンド社