Q. 聴覚障害とはどのような障害ですか

概要

極論すれば、高校までの授業や大学受験は、授業を聞かずとも、教科書や参考書を読むことでかなりの得点をとることも可能です。しかし、大学ではそうはいきません。テキストは一定ではなく、教員の講義や討論が授業の中心を占めているからです。聴覚障害は外見からではわかりません。授業の情報保障はもちろん欠かせないものですが、教室内の何気ない会話や笑いに、加わることができない当事者たちの困難を理解することが大切です。

多様な障害

一口に聴覚障害と言っても様々です。
(伝音難聴)外耳と中耳に障害があり、音が小さくなったように聞こえにくくなる
(感音難聴)内耳や聴神経などに障害があり、元の音声情報がぼやけたり歪んだりしたような聞こえ方になる
(混合難聴)両方に障害がある 片耳だけ聞こえにくい人、両耳とも聞こえにくい人などもいます。聴覚障害の程度は、一般に「軽度、中等度、重度、ろう」に分けられます。(下部参照)

聴覚障害者の聞こえ方は、聴覚障害の種類(伝音難聴、感音難聴、混合難聴)や程度(軽度、中等度、重度など)だけできまるものではありません。本人の知識・経験や、会話状況(対話、集団会話、騒音のある場での会話、講演など)、周囲の人々の配慮の仕方などの条件でも変わってきます。また、成長のどの過程で聞こえなくなったのか、時期によっても影響が異なってきます。
健聴者との音声会話が成立しにくい状況が日常ある場合、聴覚障害者の中には、その困難は自分の聞こえだけが原因と考えて自分を否定的に見たり、周囲の配慮に対しても自分のニーズを確認できない場合があります。

多様な困難

音が小さくなったように聞こえにくくなる伝音難聴は、補聴器を装用することで正常な聞こえ方に近くなる可能性がありますが、感音難聴の人が補聴器を用いても音声情報がぼやけたり歪んだりしたような聞こえ方になる場合が多く、特に重度の場合、元の音声情報が何なのか見当を付けることは困難です。このように補聴器を装用しても効果が少ない場合があります。
軽度、中等度の場合でも、特定の子音(K、S、T等)が聞き取りにくい、また、きれいに話せても、会場の条件(広さ、静かさ、話者の位置関係など)がよくないと自力での聞き取りが難しくなる場合があります。健聴者が、大勢の人がいる場面で一斉に発言したり、雑音が入り混じったりする場面で話す場合、聞き取りが低下します。

聴覚障害学生にはどのような配慮が必要でしょうか?

健聴者とコミュニケーションをとる際のニーズや方法は聴覚障害学生一人一人異なります。これは、前述のように、聴覚障害学生の聞こえ方(聴覚障害の種類や程度)の他に、聞こえなくなった時期や教育環境などによっても影響を受けると言われています。例えば、すべての聴覚障害学生が手話によってコミュニケーションを行っているとは限りません。
一方的に先入観を持つことは避け、聴覚障害学生のニーズを確認して、コミュニケーション方法を選択するようにこころがけましょう。

(広瀬 洋子)

参照文献

  1. 軽度難聴(25~50デシベル)
    一対一の会話には不自由しない、会議の場では聞き取りが少し困難
  2. 中等度難聴(50~70デシベル)
    会議の場での聞き取りが困難になる。1メートル位離れた大きな声は分かる
  3. 重度難聴(70~100デシベル)
    40センチ以上離れると会話の言葉が分からない。耳に接しなければ会話の言葉が理解できない
  4. ろう(100デシベル以上)
    会話の言葉がまったく分からない
  • 日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan)全国の高等教育機関で学ぶ聴覚障害学生の支援のために立ち上げられたネットワークで、筑波技術大学をはじめ全国の13大学・機関の協力により運営されています
    http://www.pepnet-j.org/
    このサイトには大学における聴覚障害者支援のノウハウなど多様な情報が掲載されておりますので、是非ご参照下さい。
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最終更新日 : 2010年4月1日