Q. どのような場合に著作物の利用の許諾を得る必要があるのでしょう

概要

教材等に第三者が作成した著作物等を利用する場合、著作権法による保護を受ける著作物か、保護期間は満了していないか、権利制限に該当しないかを調べ、利用の許諾を得る必要があるか否か検討します。利用の許諾を得る必要がある場合は、まず権利者の連絡先を調べ、許諾を得ることになります。

許諾を得る必要があるか否かの考え方

教材等に第三者が作成した著作物等を利用する際に、権利者の許諾を得る必要があるか否かは、概ね次のような手順で検討します。なお、一つのコンテンツの中に、複数の権利が重畳している場合はそれぞれの権利について検討する必要があります。

1.保護される著作物等に該当するか
利用するものが著作物及び実演、レコード、放送、有線放送のいずれにも該当しない場合は、著作権法上は利用の許諾を得る必要はありません。著作物については『「著作物」とは何を指しますか』で説明していますが、事実やデータ、アイデアや学説自体は著作物ではないため自由に利用できます。なお、大多数の国が著作権等に関する条約に加盟しているため、外国の著作物等もほとんどは保護対象となります。

2.保護期間は満了していないか
著作権の保護期間は原則として著作者の死後50年までです。保護期間が満了していれば許諾なしに利用することができます。なお、保護期間については、例外がありますので注意してください。

3.権利制限に該当するか
著作物等の利用が権利制限(著作権法第30条~第50条、第102条)に該当する場合は、許諾なしに利用できます。なお、権利制限については、それぞれ様々な条件が定められているため、各条件を満たしているか慎重に検討することが必要です。

4.著作権者等の許諾を得る
上記の検討により、許諾なしに利用することができる場合に該当しないときは、著作権者等を調べ、利用の許諾を得る必要があります。

利用許諾は「著作権者」から

著作物の利用の許諾は著作権者(実演、レコード、放送及び有線放送については著作隣接権者)から得ることになります。著作権は著作者が有している場合が多いものの、譲渡できる権利であり、著作者以外の者が著作権者の場合もあります。著作者の肩書き等によりその連絡先が明らかな場合は直接問い合わせればよいと思いますが、連絡先が不明の場合は、その著作物の提供元(出版物であれば出版社、放送番組であれば放送局等)に問い合わせるのも一つの方法です。また、音楽などの著作物の場合、著作権等管理事業者(文化庁ホームページで調べられます。)が権利を預かっている場合もあります。

著作権者の連絡先がわかれば、利用の許諾について交渉することになります。双方が合意すれば利用方法や条件はどのようなものでもかまいませんが、利用者は許諾の範囲内でしか著作物を利用できませんので、どのように利用するのか、事前によく検討しておくことが必要です。例えば、印刷物への複製・頒布の許諾を得ただけではその印刷物をホームページにアップロードすることはできませんし、演奏の許諾を得ただけではその演奏を録音・録画することはできません。なお、利用を許諾するか否かは著作権者の自由ですので、利用したい理由をきちんと説明し、著作権者の理解を得ることが必要です。また、利用の許諾は口頭の約束でも有効ですが、口約束の場合、「許諾した覚えがない」「許諾内容が違う」などのトラブルが生じることがあり得るため、できるだけ文書を作成するようにしてください。

なお、著作者は氏名表示権や同一性保持権を有していますので、著作者名の表示の変更や著作物の改変などを行う場合は、著作者の了解を得る必要もあります。

(尾﨑 史郎)

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最終更新日 : 2012年3月29日