Q. 授業に万全の体制で臨むために、必要なことは何ですか

概要

教員は、自信を持って、授業に万全の体制で臨むことができるようになりたいと思っています。しかし、授業の準備が完全にできないとか、授業の前に緊張してしまったり、というように教員自身の心理や感情、行動をコントロールすることができなくなってしまうことがよくあります。このような問題に対処するための方法として、「セルフ・マネージメント」について知っておくと便利です。ここでは心理学の概念を使って考えてみます。

理論

セルフ・マネージメントとは、個人がその目的にあわせて効果的に自分の活動を取ることができるようにするための方法やスキルのことを言います。そこには、目標を立てる、目標達成へ向けてプランを立てる、スケジュールを立てる、という事前のことから始まり、実際に課題を遂行しながら、自分自身のパフォーマンスを評価をし、必要に応じて自分自身に介入して自分の活動を変えていく、ということが含まれます。
セルフ・コントロールは、セルフ・マネージメントの中で主要な部分を占めています。セルフ・コントロールのためには、セルフ・モニタリングが必要となります。つまり、個人が自分自身を「知り」そして「制御する」ということです。

自分自身を知るとは、心理学では「メタ認知」と呼ばれます。メタ認知は広い概念で、単に自分の認知(記憶や理解、問題解決など)の特徴を知るばかりでなく、その前提として自分の身体・生理的な特徴や感情・性格面での特徴を知ることも含まれます。そして、自分自身を知った上で、自分自身を制御することも、メタ認知に含まれるという考え方さえあります。メタ認知についての文献はたくさんありますが、ここでは、ブラウン(1984)を推薦します。
感情や行動を制御することに関しては、心理学では「行動分析」に基づく方法が最も効果的であると言えます。「行動分析」は、行動をその前提と効果の3者関係で捉えるものです。何らかの状況や場面で、何らかの行動が自発的に取られ、その結果報酬や罰といった効果がもたらされる、ということです。行動分析学にもとづいた行動の制御については、島宗(2000)が参考になります。

(高橋 秀明)

参照文献

  • ブラウン、A. L.、湯川良三・石田裕久(訳)1984 メタ認知―認知についての知識 サイエンス社
  • 島宗理 2000 パフォーマンス・マネジメント―問題解決のための行動分析学 米田出版
最終更新日 : 2010年4月1日