Q. 最近利用できるICTツールをゼミに活用する方法を教えてください (1) ICTツールのゼミへの活用

概要

授業を電子化する動きが近年のICT(情報通信技術)の進歩を背景にして積極的に展開されています。たとえば放送大学の場合、テレビ、ラジオ、インターネット(ストリーミング配信)といったメディアを活用して行われています。しかし、ゼミについてはまだ試行錯誤が続いている状態です。ここでは、筆者の経験をもとにして、便利なICTツールの使い方をご紹介します。

1. ゼミ

ゼミというのはゼミナールの略で、日本語の演習に対応します。授業の形式が、基本的には教師から学生への一方向であるのに対し、ゼミの形式は、学生の発表や報告を基本にし、それに教師がコメントを付けたりすることから双方向的です。授業についてのICT利用が積極的に行われるようになったのは、それが一方向的であることから比較的容易だったからだといえますが、ゼミの場合、その双方向性をいかにして無理なく実現するかがICT導入のポイントになります。

2. ミーティングの電子化

ミーティングとは、複数の人が集まって情報を交換することをいいますが、その意味で、ゼミもミーティングの一種といえます。ヒューマンインタフェースの分野では、CSCW (Computer Supported Collaborative Work)、つまりコンピュータに支援された共同作業という研究領域で、このミーティングを如何にして電子化するかが研究されてきました。

この分野でまず行われたのはミーティングの分類です。下の表は、そこで使われてきた表を改変したものです。空間的には、ミーティングの参加者が同じ場所にいる場合と異なる場所にいる場合とが区別されてきました。ただし、両者が混合しているケース、つまり一部の参加者は同じ場所にいるけれど、他の参加者は異なる場所にいるという場合があり、その支援は容易でないことが知られています。もう一つ、行に割り当てられているのが時間です。同時的にミーティングが行われる場合と、時を隔てて、つまり継時的に行われる場合がある、というわけです。ただ、継時的な場合はミーティングというよりは、情報伝達と言った方が良いかもしれません。そこで、次の3では、同時的な場合を中心にして説明します。

3. 同じ場所の場合

同じ場所で行われるミーティングを電子的に支援する場合、シンプルなのはプロジェクタを利用してPPTで作成した教材を提示するようなやり方です。現在、これは初等教育から高等教育まで、多くの場面で利用されています。
大がかりなものとしては、ビジネスミーティングや大学の委員会などで利用されているような、各参加者の机にパソコンがあり、それで資料を見ながら、マイクを使って音声対話をする仕組みのものがあります。ただ、ゼミの場合、そこまでコストをかける必要はないでしょう。

4. 異なる場所の場合

異なる場所で行われるミーティングの場合、電子会議システムといって、双方の場所にパソコンなどのICTシステムがあり、両者をインターネットでつなぎ、動画像と音声で会議を行う仕組みのものがあります。放送大学には本格的なシステムが導入されていますが、ゼミの場合にはSkypeという仕組みを低廉な設備投資で利用することができます。このことについては、次の節で説明します。

5. 混合の場合

対応が難しいのは、対面参加者(リアル参加者)と遠隔参加者(バーチャル参加者)の双方が参加しているミーティングの場合です。相当大がかりなシステムを利用しても、バーチャル参加者がミーティングに溶け込むのは難しく、どうしてもリアル参加者が中心になってしまいがちです。研究レベルでも、この問題に対する適切な回答はまだ得られていません。まして、低廉なシステムでこれを実現することは困難といえます。

6. 資料の共有

同時的な場合も継時的な場合も、ミーティングに必要な資料は、ICTを利用して交換したり配布したりすることができます。簡単なものとしてはDropboxというものが知られています。このことについては後の節で説明します。

パワーポイントによる説明を共有するためには、画像のリアルタイム転送の機能が必要になりますが、そういう機能がなくても、事前に資料を配付しておき、それにページ番号が打ってあれば、特に大きな問題はありません。

7. スケジューリング

ミーティングを行うには、日時を決めておかねばなりませんが、そのための便利なツールがインターネットで利用できます。ちょー助など幾つもの種類がありますが、これについては後の節で説明します。

(黒須 正明)

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最終更新日 : 2013年3月20日