Q. 留学生へのゼミ指導-研究内容に関する指導はどのようにしたらいいでしょうか

留学生が卒業論文や修士論文のテーマとして取り上げる内容は、理系や工学系の場合は別として、何らかの形で留学先である日本と関係したものであることが多くあります。理系や工学系の場合には、テーマの内容はユニバーサルなものであるから、留学生の母語による文献もあるだろうし、英語ができるなら英語の文献を利用することも可能になるでしょう。もちろん日本語がそれなりにできれば日本語の文献も利用できるわけです。
しかし、特に文系で、日本に関係したテーマを取り上げている留学生の場合には、日本語の文献の読解力が必須のものとなります。

こうした文献の読解力は、日本人の学生の場合にも、教師が期待するほど高くないことが多いです。
まず論文という文章構造になれていないことが多いし、専門用語についての予備知識が不足していることもあります。留学生の場合には、それに加えて日本語一般の知識が不足していることがあります。その点で、特に留学生に論文読解を指示する場合には、日本人学生に指示するものより多少難易度の低いものを選定して指示することが必要となるでしょう。
また、日本文化の基礎的な部分について、一般書でも良いので、いろいろと読破させ、日本人や日本文化、日本の歴史などについて、少なくとも日本人学生が常識的に持っていると思われる程度の知識を身につけさせるように指導することも必要になります。
また民族性によって、ゼミ指導の場面における自己主張の度合いが異なる点にも配慮が必要です。ある民族では、教師は絶対であり、教師の言ったことが非常に強い意味を持ってしまいます。いいかえれば、冗談半分に「駄目だなあ」と言っただけで、強い落ち込みを経験してしまうことになります。
また、別の民族では、ともかく自己主張をしなければ生きてゆけないという考え方が根付いているため、教師からみてテーマには関係ないだろうというような事柄についても、強く主張しつづけ、それを撤回させるために強い態度に出なければならないこともあります。
また民族によっては、きわめてロジカルに論を展開する学生もいますが、これは教師にとってはむしろ好機と考えるべきでしょう。教師自らの論理が試されることになるわけですから、こうした留学生に対しては、論理には論理をもって応えるという態度で積極的に臨むのが良いでしょう。

(黒須 正明)

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最終更新日 : 2012年3月1日