Q. 人前で話すのが苦手なのですが、どうしたらよいですか

概要

大学教員は、授業や学会発表において人前で話すことを必然的に求められますが、それが苦手だという人も多いようです。ここでは、この苦手意識を克服するための方法について考えてみます。

事例

授業の前に上がってしまいますが、どうしたらよいですか」でも紹介していますが、まずは、セルフ・モニタリングしてみましょう。教員自身が、授業や学会発表において人前で話すことを振り返るのが難しければ、その場面をビデオカメラで撮影しておいて見直してみる、ということも試みてください。

人前で話しをする自分自身を振り返ってみるということは、聞き手の立場で評価してみる、ということでもあります。まずは、内容はともかくも、話しを聞き取れるだけの音量があるか? 滑舌が悪くないか? ということを確認してみましょう。さらに余裕があれば、書きおこしをしてみることも有益です。一文がだらだらと長すぎる、「ええと」などの間投詞が多い、など無意識に話していることを振り返ることができます。

このようにセルフ・モニタリングしてみて、教員自身で気がついて直すことができることもたくさんあると思います。話す内容を再検討したり、無意識で話している間投詞に注意することは、教員自身でも対処することが可能でしょう。逆に、自分では苦手意識を持っていても、案外とうまく話をしている、と再認識できるかもしれません。

音量が小さい、滑舌が悪い、という問題に対しては、いわゆる「発声法」の練習を重ねることで対処できると思います。アナウンサーの訓練方法としてよく知られている方法を簡単に紹介します1

  1. 腹式呼吸によって発声する: まずは、腹式呼吸によって声を出し、豊かな音量を保つことができるようにします。
  2. 母音を1つずつ確実に発音する: 「あえいうえおあお」と1つずつしっかりと発音してみます。続いて「かけきくけこかこ」「させしすせそさそ」・・・「わえいうえをわを」と順番に練習します。
  3. 早口言葉で練習する: たとえば、「お綾や母親にお謝りなさい」というのは母音が連続していますので、練習のためには最適でしょう。

その他に、たとえば村松(2005)は、動画と音声ファイルを参照にすることができ便利です2
このような発声法の練習を重ね、また本番の授業や研究発表の前にも試してみる、ということで、人前で話す苦手意識も克服することができると思います。また、必要に応じて、ボイス・トレーニングなど専門的な訓練を受けることもできます。

一方で、単に発声法を練習するだけでなく、話しをしている最中に、視線を聞き手にまんべんなく向ける、身振り手振りを交える、ということも、大事なことです。これらは、ノンバーバル・コミュニケーションと言われますが、対面コミュニケーションにおいて重要な意味を持っていることは事実です。視線や身振り・手振りは、無意識のうちに行ってしまうものですので、まずは、教員自身の話している姿をビデオカメラで撮っておいて、見直してみましょう。意識的に、視線を移動したり、身振り・手振りができるように練習することも試みましょう。必要に応じて、演技指導を受けるのも良いでしょう。

限界

教員は、役者やアナウンサーではありませんので、発声法の練習を重ねるだけでなく、話す内容をより良くするための努力が最優先に必要であることは言を俟ちません。また、教員は、話しの内容自体について、興味や熱意をもっていることは前提にしています。

(高橋 秀明)

参照

  1. 宮田英理 2012 プレゼンテーションの発声法 総研大レクチャー プレゼンテーションセミナー2012 (2012.01.14実施)
  2. 「できる教師の話し方・聞き方」読者の皆様 (参照日 2012.01.31)
    http://www.ne.jp/asahi/speech/communication/sub7.htm

引用文献

  • 村松賢一 2005 できる教師の「話し方・聞き方」 明治図書.

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最終更新日 : 2012年3月1日