Q. 授業で使用するためであれば著作物をコピーできると聞いたことがありますが、どこまでできるのですか

学校等の授業で使用するためであれば、以下の条件を全て満たせば、著作権者の許諾を得ることなしに著作物を複製できます(著作権法(以下「法」という。)第35条第1項)。

  1. 営利を目的としない教育機関であること
  2. 授業を担当する者又はその授業を受ける者が複製すること
  3. 本人の授業で使用すること
  4. 授業で必要とする限度内であること
  5. 既に公表された著作物であること
  6. 著作物の種類・用途、複製の部数・態様に照らし著作権者の利益を不当に害さないこと
  7. 慣行があるときは「出所の明示」をすること

1の「営利を目的としない教育機関」には、国公私立の小・中・高・大学・高専などの学校だけでなく、図書館・公民館等の社会教育機関、教育センターや職業訓練所などの組織的・継続的に教育機能を営む機関も含まれますが、企業の社員研修施設は営利目的であり対象外です。なお、構造改革特別区域法に規定する学校設置会社の設置する学校については、同法第12条第11項により、認められています。

2ですが、複製できるのは、「授業を担当する者又はその授業を受ける者」つまり、その授業を行う先生又は生徒です。なお、先生が事務職員や生徒に指示して複製させることも可能ですが、外部のコピー業者等に依頼して複製することは対象外です。

3ですが、「授業」には、教科の授業だけでなく、初等中等教育機関の場合、修学旅行や運動会などの特別活動も含まれます。なお、授業で使用するための複製であり、保護者向けの配布物などに複製することは対象外です。

4として、「授業で必要とする限度内」とされていますので、複製できるのは授業に必要部分で必要部数のみということになります。

複製できるのは、5「既に公表された著作物」であることが必要ですから、生徒が先生に提出しただけのレポートなど、未公表の著作物については対象外となります。

6の「著作権者の利益を不当に害さない」ことですが、ワークブックやドリルのように元々授業などで使用することを想定して作成された著作物の複製は、その著作物の本来的な利用市場と衝突するものであり、著作物の「種類・用途」に照らし著作権者の利益を不当に害すると考えられますし、大学の大教室の授業で数百人の生徒に配布するための複製や、製本するなど市販の商品に代替するような形での複製についても、「部数・態様」に照らして著作権者の利益を不当に害すると考えられます。

7の「出所の明示」については、出所を明示する慣行がある場合は、合理的と認められる方法及び程度により、出所を明示することになっています(法第48条第1項第3号)。

なお、複製だけでなく、翻訳、編曲、変形又は翻案することもできます(法第43条第1号)し、複製物を授業で使用するために譲渡することもできます(法第47条の9)ので、先生が翻訳したものをコピーして生徒に配布することも可能です。また、法第35条や法第47条の9の規定は法第102条第1項で著作隣接権にも準用されていますので、実演、レコード、放送及び有線放送についても複製できます。

(尾崎 史郎)

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最終更新日 : 2012年3月29日